膝の痛み
1.膝の痛みとは
膝の痛みは、怪我、オーバーユーズ(過剰な運動)、または関節の炎症などの状態によって起きる整形外科受診のトップ3に入る一般的な症状です。膝の痛みの症状は、軽い不快感から、日常生活がしんどくなるほど深刻な痛みまで様々です。
2.膝の痛みの原因
膝の痛みの一般的な原因については大きく4つが挙げられます。
怪我、外傷
膝の怪我は、スポーツや日常的な活動中にも起こることがあります。特に、走ったりジャンプしたりする運動や人と接触するようなコンタクトスポーツ、切り返し動作を行うようなスポーツで、多く発生します。怪我の種類には、骨折、捻挫、靭帯や軟骨の損傷などがあります。もちろんそれらが重なって起こることもあり得ます。
過剰使用
膝は、体重を支えたり、歩いたり走ったりと常に酷使されるため、長期間にわたって過剰に使用することが原因で痛みが起きることがあります。これは、ランナーやジャンプをするバスケットボール、バレーボール、サッカー、テニス、野球などのスポーツ選手、あるいは長時間立ち仕事をする人などに多く見られます。
肥満
肥満の人は、膝に過剰なストレスがかかるため、痛みを引き起こすことがあります。膝にかかる負荷は、体重に比例するため、肥満の人はより高いリスクがあります。逆にいうと体重を少しでも減らすことができれば痛みを軽減できるので、改善の余地があります。
関節炎
膝には関節炎が生じることがあります。関節炎は、膝の関節を覆う軟骨の破壊によって引き起こされ、膝の動きを制限されることがあります。関節炎は年齢とともに発生することが多く、特に50歳以上の人によく見られます。
高齢の方では偽痛風という関節炎が最も多いです。偽痛風は痛風性関節炎に似た症状ですが、半月板という膝のクッション部分に石灰が沈着している方に多く発症し、原因はピロリン酸カルシウムという結晶によるものです。関節液を採取してステロイドの薬を入れることで改善が得られることが多いので、おじいちゃんおばあちゃんの膝が腫れて真っ赤かに腫れた場合は整形外科を受診することで速やかに症状が改善することが多いです。一方、化膿性膝関節炎というすぐに治療が必要な状態も中には紛れています。偽痛風との区別が難しいこともあるのですが、全体的に赤みが強い、穿刺した液体が膿のような場合は診断可能です。すぐに診断することが難しいところが悩みの種です。化膿性膝関節炎と判明した場合はなるべく早く関節鏡を用いて洗浄した方がいいので、緊急で手術ができるところに紹介をいたします。
3.膝の症状
3-1.痛み
膝の痛みは、激しい痛みから軽い違和感まで、程度は様々です。痛みは膝の関節、靭帯、軟骨、骨、半月板、どの部分からでも発生することがあり、長時間座ったり立ち上がったりするときに痛みを感じることが多いです。
3-2.腫れ
膝の痛みには、腫れが伴うことがあります。腫れは、炎症や怪我によって引き起こされることが多く、膝の動きを制限することがあります。
3-3.動きの制限
膝の痛みがあると、膝の動きが制限されることがあります。膝を伸ばしたり曲げたりすることが難しくなり、日常的な活動に支障をきたすことがあります。
3-4.ポップやクリックの音
膝の痛みには、ポンといったポップ音や膝が引っかかるようなクリックの音が伴うことがあります。これは、膝に異常な動きがある場合に発生することがあります。
これらの症状がある場合、膝の損傷を抱えている可能性があります。ただし、これらの症状があるからといって、必ずしも膝に問題があるわけではないので、症状が継続する場合や、痛みが強い場合は、整形外科への受診をおすすめします。
4.膝の診察
膝の痛みの診察では、まずは医師が患者様の症状を詳しく聞き取り、身体診察を行います。その上で画像検査を行います。
4-1.X線検査
X線検査は、骨の異常や変形を確認するために行われます。骨折や変形性関節症、膝関節の骨壊死や膝蓋骨脱臼などの疾患が確認できます。
4-2.MRI検査
MRI検査は、レントゲンでは見つからない軟部組織の異常や骨の損傷を確認することができます。膝のクッションである半月板の損傷や靭帯の損傷、膝蓋腱などの腱の評価も可能です。骨の損傷なども可能なので、非常に有用な検査です。当院ではMRIを設置しているために当日の検査も可能となっています。
4-3.CT検査
CT検査は、骨や軟部組織の異常をより詳細に確認するために行われます。骨折ならば骨折の部分や骨折のタイプも把握できます。また、変形性関節症、骨腫瘍などの疾患も確認できます。当院にはCT装置はないために、福井県立病院に紹介し、確認させていただくこととなります。
4-4.膝関節穿刺
膝関節穿刺は、膝の関節液を注射器で採取し、炎症や感染症がないか調べるために行われます。関節液の色や性状も診断の参考になります。膝関節炎や関節リウマチなどの疾患が確認できます。
4-5.超音波検査
近年では超音波検査も診断の助けとなっています。関節の中はなかなか見えませんが、表層の診断には極めて有用です。膝関節の炎症は血流を評価することで視覚的に確認可能ですし、身体診察でもわからない水腫(膝関節の水の貯留)なども診断可能です。疼痛部位に腱、靭帯、神経に超音波を当てることで得られる情報量は非常に多いです。
5. 膝の痛みの治療(手術ではない治療、手術治療)
膝の痛みの治療は、疾患の種類や進行度合いによって異なります。以下に一般的な治療法をいくつか紹介します。
5-0.再生医療
最新の治療で医療の新たな可能性と言えます。当院でも実施可能で、入院が不要で外来のみで完結しますので、有用と考えています。
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5-1.薬物療法
痛みや炎症を抑えるために、ロキソニンに代表される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛剤が処方されることがあります。また、膝の潤滑液である関節液を増やすために、ヒアルロン酸の注射もおこなっています。
5-2.リハビリテーション
膝の筋力や柔軟性を改善するために、物理療法やエクササイズ、ストレッチングなどのリハビリテーションが行われることがあります。これらの治療は、軽度の疾患や手術後のリハビリテーションに効果的です。
5-3.手術
進行した疾患や、上記の治療で改善しない場合は、手術が必要な場合があります。例えば、半月板損傷や膝関節の変形などが挙げられます。手術は、関節の修復や置換、膝関節鏡検査(膝関節鏡手術)などがあります。
5-4.補助的療法
温熱療法、冷却療法、電気療法、マッサージ、鍼灸、整体などの補助的療法が、痛みの緩和やリラクゼーションに効果的な場合があります。
医師は、患者の症状や疾患の進行度合いに応じて、適切な治療法を選択します。治療には時間がかかる場合がありますが、正しい治療法を選択し、適切に治療を続けることで、膝の痛みの改善が期待できます。