子供の捻挫:治療から予防まで

*本記事の子供とは成長線(骨端線)が閉鎖するまでのことを指します。
骨端線閉鎖時期 男の子:16歳以上 女の子:15歳以上

皆さんは、部活や遊びなどで思いっきり走り回っているときに足首をひねった経験はありませんか? 足首をひねってしまうと、とても痛くて歩きづらくなりますよね。足首の「捻挫(ねんざ)」は、どんな年代の人にも起こりやすいケガですが、成長期の子どもは特に注意が必要だといわれています。

実は、私自身も9歳くらいから何度も足首の捻挫を経験してきました。しかも、痛みがおさまるとすぐに運動を再開していたため、成長してからも何度もくり返し捻挫をすることになりました。その結果、足首を支える靭帯(じんたい)が完全に切れてしまったり、剥(は)がれた骨が残ってしまったりと、足の形にも少し影響が出てしまいました。こうした経験から「子どもの捻挫は早めに正しく対応するのが本当に大切だ」と強く感じています。

本記事では、子どもの捻挫にまつわる基礎知識や治療法、さらには予防法までをわかりやすくまとめました。今回「子ども」とは成長線(骨端線)が閉じるまでの時期を指し、男の子は16歳未満、女の子は15歳未満を目安としています。部活やクラブチームでスポーツをしている方、またはこれから運動を始めようと思っている方に向けて、捻挫の知識をぜひ役立てていただければうれしいです。

子供の捻挫とは

「捻挫」とは、足首などの関節をひねった結果、関節を安定させるための靭帯が引っ張られて伸びたり、部分的あるいは完全に切れてしまったりするケガのことです。足首を外側にひねったときに起こりやすく、多くの人が一度は経験する可能性があります。

子どもの場合、大人に比べて骨や靭帯がまだ成長途中にあります。そのため、わずかな力がかかってもケガをしやすく、骨折に至ってしまうことも珍しくありません。しかも、子どもの骨には軟骨(なんこつ)というやわらかい組織が多く含まれており、レントゲン写真で見えにくい場合があります。「ただの捻挫だと思ったら、実は骨折していた」ということもあるので、痛みや腫れが強い場合には必ず病院で検査を受けましょう。

子どもは大人に比べて痛みに強かったり、ケガをしてもすぐ動きたがったりします。私も子どものころは、痛みが少しおさまっただけですぐに走り回っていました。その結果、じゅうぶんな回復が終わらないうちに再び足首を痛め、捻挫をくり返すことになりました。こうした悪循環を防ぐためにも、まずは「痛みを甘くみないこと」が大事です

────────────── ■捻挫の段階と症状の目安───────────────

捻挫は症状の重さによって大まかに段階(グレード)を分けることができます。以下の表は、靭帯の状態と症状の目安をまとめたものです。実際の治療期間は人それぞれ異なりますが、参考にしてみてください。

捻挫の段階 靭帯の状態 症状の目安 治療期間の目安
軽度 靭帯が少し伸びた状態 軽い痛み、わずかな腫れ、歩けることが多い 1~2週間
中度 靭帯が部分的に切れた状態 痛みや腫れがはっきり、歩くのがつらい 2~4週間
重度 靭帯が完全に切れた状態 強い痛みや腫れ、荷重困難(歩行不可)の場合も 4週間以上~数か月になることも

上記の表はあくまで目安ですが、歩けないほど痛む場合は骨折や重症の捻挫を疑う必要があります。痛みをガマンして部活や運動を続けると、靭帯がボロボロになったり、成長線付近にダメージが入って大人になっても足首が不安定なままになったりするリスクが上がります。

子供の捻挫の応急手当て

捻挫をしたときには、まず「RICE(ライス)処置」と呼ばれる応急手当を行いましょう。RICEとは、次の英語の頭文字をとったものです。

  • Rest(安静):ケガをした部分をなるべく使わないようにする
  • Ice(冷却):氷などで患部を冷やす
  • Compression(圧迫):包帯やテーピングで適度に圧迫する
  • Elevation(挙上):患部を心臓より高い位置に上げる

この手当てを行うことで、痛みや腫れをおさえ、回復しやすい環境をつくります。最近ではRICE処置に加えて「POLICE(ポリス)処置」という新しい概念も提案されています。こちらは、RICEに以下の2つが加わった形です。

  • Protection(保護):ギプスやサポーターなどで患部を守る
  • Optimal Loading(適切な荷重):完全な安静ではなく、ケガの状態に合った適度な負荷をかける

ただ安静にしているだけでなく、専門家(医師や理学療法士)の指示のもと、必要な範囲で足に少し負荷をかけながら回復を促す考え方です。長期間ギプスや装具(そうぐ)で固定しすぎると筋肉が弱ってしまい、かえって回復が遅れる場合があります。そのため、「Protection(保護)」と「Optimal Loading(適切な荷重)」のバランスが重要だとされています。

参考文献
Bleakley CM, Glasgow P, MacAuley DC. PRICE needs updating, should we call the POLICE? Br J Sports Med 46:220–221, 2012.

子供の捻挫の予防策

1.靴選びが大事
子どもの捻挫を防ぐうえで、足に合った靴を選ぶことはとても大切です。靴を買うときは、足の長さだけでなく幅(ワイズ)もしっかり確認しましょう。サイズの合わない靴をはき続けると、足首への負担が増え、捻挫しやすくなるだけでなく、足の成長にも影響が出る可能性があります。

もしサイズ選びがむずかしい場合は、専門店で足のサイズや形を測定してもらうのもおすすめです。当院には石川県の靴屋「NOSAKA」さんも来られており、足に合う靴の選び方を丁寧にアドバイスしてくれます。

2. ストレッチと準備運動
運動前にはストレッチや軽いランニングなどでしっかりウォーミングアップし、筋肉や関節を温めておきましょう。体が冷えた状態でいきなり激しい運動をすると、足首に大きな負担がかかり、捻挫のリスクが高まります。

3. バランス感覚と体幹(たいかん)トレーニング
足首を安定させるためには、バランス感覚や体幹(お腹や背中まわりの筋肉)の強化が重要です。たとえば、片足立ちで何秒キープできるか挑戦したり、バランスボードに乗ってみたりするだけでも効果があります。部活などで忙しくても、すきま時間に続けることで捻挫しにくい足首を育てられます。

4. 捻挫後のリハビリをしっかり
ドラゴンボールのサイヤ人のように、「ダメージを受けた後は前よりも強くなる!」という気持ちで、リハビリ期間に体幹や足首の筋力、バランス能力を高めておくのがおすすめです。痛みが取れただけで元の運動強度に戻すと、同じケガをくり返してしまうリスクが高まります。「リハビリ期間=強くなるための時間」と考えて、じっくり体をつくり直しましょう。

 

子供の捻挫の症状と治療時間

捻挫の症状は痛みや腫れ、内出血(うちしゅっけつ)などがあります。軽い場合は数日から1週間ほどで腫れや痛みがおさまることもありますが、歩くのがむずかしいほど痛いときは、靭帯の大きな損傷や骨折が疑われます。こうした場合はまずギプスや装具で2週間ほど足首を固定し、2週間後にもう一度病院で検査を受けます。その後、少しずつ装具を外す時間を増やすなど、段階的に治療を進めます。

日常生活に復帰できるようになるまでおよそ4週間、スポーツに本格的に戻るまでには2か月ほどかかることが多いです。ただし、これはあくまで目安で、回復のスピードは人それぞれです。足首の状況をしっかり診てもらいながら、無理のないペースで治療を続けることが大切です。

私の場合、痛みがなくなるとすぐ運動を再開してしまい、靭帯を完全に切ってしまうほどの再発をくり返しました。痛みが消えても靭帯や骨が完全に治っていない可能性があるので、痛みだけを目安にせず、医師のアドバイスに従って復帰の時期を考えるようにしましょう。

以上、子供の捻挫についての基本的な知識をお伝えしました。子供さんの健康と運動での安全のために、これらの情報を御活用いただければ幸いでございます。

https://youtu.be/xNVM7IBu9Ig
https://youtu.be/g-cJYuzb0Zc
今までの内容をまとめてYOUTUBEにしています。動画も理解がしやすいと思いますので、ご参照ください。

Q&A コーナー

Q1. 足首をひねったら、どのタイミングで病院に行くべき?
A1. もし痛みが強く歩きにくい、足首が大きく腫れている、押すと激痛があるといった症状があれば、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。骨折や靭帯の大きな損傷があるかもしれないからです。痛みが軽く、あまり腫れていない場合でも、心配なときは念のため診てもらうと安心です。

Q2. ギプスやサポーターで固定している間、まったく動かさないほうがいいの?
A2. 完全に動かさないと筋力が低下してしまいます。医師や理学療法士の指示のもと、可能な範囲で指先を動かしたり、体のほかの部分を鍛えたりするのが大切です。POLICE処置の考え方では、状態に合った負荷をかけることで回復を早めることもできるとされています。

Q3. 捻挫をくり返す原因は何?
A3. 靴が合っていなかったり、足首まわりの筋肉や体幹が弱かったり、練習前の準備運動が足りなかったりと、いくつかの理由が考えられます。また、一度捻挫すると関節がゆるくなり、再発しやすくなることもあります。

Q4. リハビリ中にできるトレーニングって具体的にどんなもの?
A4. 片足立ちやつま先立ち、足首の回し運動、バランスボードを使った運動などがあります。また、足首に負担の少ない体幹トレーニングや上半身のトレーニングもおすすめです。痛みや腫れがひどい場合は無理せず、医師のOKをもらってから始めましょう。

Q5. 痛みが完全になくなれば、もう運動しても平気?
A5. 痛みがないからといって靭帯や骨が十分に回復しているとは限りません。医師の診察で「運動を始めても大丈夫」と言われてから、少しずつ運動の強度を上げていきましょう。

Q6. 家でできる捻挫の応急処置は?
A6. まずはRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を実践します。氷や保冷剤をタオルでくるんで痛む部分を冷やし、包帯などで軽く圧迫しながら、足首を上げて安静にしましょう。痛みが強い場合や腫れがどんどん大きくなる場合は、早めに病院へ行ってくださ

─────────────────── ■参考文献────────────────

まとめ

足首の捻挫は、子どもから大人までとてもよく起こるケガです。子どもの場合は骨や靭帯がまだ成長途中で、しかも軟骨が多いので、レントゲンで骨折が隠れていることもあります。痛みがあるのに放っておくと、のちのちまで足首の不安定さに悩まされることになるかもしれません。

捻挫をしたら、まずはRICE処置を行い、痛みが強いときや腫れが大きいときは早めに病院で検査を受けましょう。RICEだけでなくPOLICE処置のように、状態に合わせて適度に足を動かすことも回復を早めるうえで大切です。ギプスやサポーターでの固定を行う場合でも、筋力を落としすぎない工夫をしながら治療を進めるよう意識しましょう。

また、ケガが治っても安心せず、再発を防ぐためにリハビリをしっかり行うことが重要です。靴選び、ストレッチ、バランス感覚や体幹トレーニングなど、普段からできる予防策もいろいろあります。スポーツを心から楽しむためには、体のケアが欠かせません。

私自身、子どもの頃の捻挫を甘く見たせいで、成長してもずっと足首の痛みと向き合うことになりました。同じように悩む人を増やさないためにも、捻挫を軽視せずに正しい方法でケアを行ってほしいと思っています。

今は少しの痛みでも、早期に治療を始めれば意外と早く回復し、さらにリハビリ期間に体幹やバランス能力を高めることで、ケガをする前より強い体づくりも可能です。捻挫をきっかけに「サイヤ人のようにパワーアップ」して、思い切りスポーツを楽しみましょう。

みなさんも、ぜひこの記事を参考に、足首のケガに対する知識を深めてみてください。大切な部活や試合に向けて、一日でも早く元気に走り回れる足を取り戻しましょう。体の声に耳を傾けながら、安全第一でスポーツライフをエンジョイしてください!