
捻挫予防について
足関節捻挫の予防と対策、そして捻挫がもたらす短期的・長期的な影響について詳述しました。自分自身の経験談を踏まえ、どのような問題が起こり得るのか、その解決策には何があるのかを包括的にまとめました。さらに、Q&A形式でよくある疑問点に答え、最後に参考文献を示します。ぜひ最後までご覧ください。
皆さんは足首をひねってしまったことはありますか。スポーツをしている人だけでなく、段差につまずいたり、坂道を走ったりしたときに「グキッ」と足をひねってしまうことは珍しくありません。いわゆる「足首の捻挫」です。足関節捻挫に関しては私自身思いがあります。
私自身学生の頃の部活で足の捻挫を繰り返していました。自分が捻挫することでチームに迷惑をかけてしまい,悔しい思いを多くしてきました. 中学校の最後の大会のことです.いつも決勝戦で勝てないチームに今回こそはと望みましたが,準々決勝で私が捻挫してしまいチームに迷惑をかけてしまいました.決勝までなんとか勝ち残ってくれましたが,ベストメンバーでは戦えず,私自身も悔しかったですが,それ以上にチームのみんなのことを思うと,情けない限りでした.
このように「足首の捻挫」は、自分一人だけの問題ではありません。自分がプレーできないことによって、仲間やチームの目標にも影響を与えます。また、捻挫をきっかけに、その後のスポーツ人生に大きな影響が出ることもあります。そこで今回は、足首の捻挫がもたらす問題点や予防策を、なるべくわかりやすく解説していきます。
捻挫自体は甘く考えられがちですが,短期的な問題と長期的な問題があります.
捻挫とは
「捻挫」とは、関節をひねることで靭帯(じんたい)や周りの組織にダメージが起こるケガのことをいいます。特に足首の捻挫では、足の外側にある靭帯に大きな負担がかかりやすく、伸びてしまったり、時には切れてしまったりすることもあります。
捻挫の程度はよく「1度(軽い)」「2度(中程度)」「3度(重い)」に分けて説明されることがあります。軽い場合は靭帯が少し伸びているだけかもしれませんが、重い捻挫になると靭帯が切れたり、骨にダメージが及んだりすることもあるのです。痛みや腫れがあるだけでなく、内出血で足首が青紫色になることもあります。
足首を捻挫すると、まずは痛くて歩きづらくなります。スポーツをしている人なら、練習や試合に出られなくなるかもしれません。しかも、一度痛めてしまった靭帯がしっかり治らないまま無理をすると、何度もくり返してしまう「捻挫ぐせ」がつきやすいのです。
短期的な問題
足首の捻挫は、スポーツの現場ではとてもよくあるケガのひとつです。短期的に見ると、大会や試合前に捻挫してしまうと、試合に出られず悔しい思いをすることになります。また、痛みがある状態だとまともに走れませんし、ジャンプや急な方向転換が必要な競技では、大きくパフォーマンスが下がってしまいます。
さらに、「たかが捻挫」と軽く見られて、周りから「大丈夫でしょ、すぐ戻ってきて」と言われることもあります。けれど、捻挫の程度によっては、靭帯が大きく損傷していることもあり、早期復帰は将来的な悪化をまねく場合があるのです。そのため、痛みが強いときは無理をせず、きちんと休んで回復を待つことが大切になります。
長期的な問題
捻挫が長引く、あるいは何度もくり返すと、足首がゆるんだ状態になってしまいます。伸びきった靭帯は簡単には元に戻りません。こうした状態が続くと、足首にぐらつきを感じたり、少しの段差や砂利道でも痛みが出たりすることがあります。
階段の上り下りで足首をうまく支えられない場合、将来的に関節の軟骨(なんこつ)がすり減ってしまい、「変形性関節症」などのもっと大きな問題につながることもあります。日常生活でも痛みや不便を感じるようになり、外出が億劫(おっくう)になる可能性だってあるのです。
スポーツをしなくなると、一見「もう捻挫しないから安心」と思うかもしれませんが、実はそうとは限りません。筋力が落ちて足首の支えがさらに弱くなることもあるので、中高年になってからも足首の痛みや変形に悩まされる人がいます。
- 砂利道が歩きにくい
- 階段降りるのが辛い
と日常生活で不便さを自覚するになります.さらに軟骨損傷,関節の変形までつながると,いよいよ歩行時に常に痛みを感じるようになり,日常生活に支障をきたします.
捻挫ぐせがついてしまう理由
「捻挫ぐせ」とは、一度足首をひねってしまうと、同じような動作や場面で再び捻挫をしやすくなることを指します。中学生や高校生の部活でも「また捻挫してしまった」という声をよく聞くでしょう。
なぜ何度もくり返してしまうのか。その理由は、主に以下の3つが挙げられます。
- 靭帯がしっかり回復していない
┗ 伸びた靭帯が元に戻らないまま運動を続けると、さらにゆるくなる可能性が高まります。 - 筋力不足やバランス感覚の低下
┗ 足首まわりの筋肉や、股関節の筋肉、体幹が弱いと、ちょっとした段差や切り返し動作で足首を守れません。 - リハビリやケアをせずに放置
┗ 一度捻挫しても、痛みが少し減ると「もう大丈夫だろう」と何もせずに放置してしまう人が多いです。これによって関節が十分に安定せず、再発しやすくなります。

捻挫予防の重要性
こうした問題を避けるためにも、足首の捻挫を予防することがとても大切です。捻挫予防に取り組むと、以下のようなメリットがあります。
- スポーツパフォーマンスの向上:足首の安定性が増すと、走る・跳ぶなどの動作が安定し、動きがスムーズになります。
- ケガによるチャンスの喪失を防ぐ:大事な試合や大会を、ケガで棒に振ることが減ります。
- 長期的な身体トラブルを回避:将来的に足首の痛みや変形で困る確率がぐっと下がります。
特に中学生・高校生の皆さんは、まだ体が成長しきっていない時期でもあり、無理をすると成長に影響が出るかもしれません。部活やスポーツを長く楽しむためにも、早いうちから予防の意識を持つことが大切です。

捻挫予防に特化したプログラムを行うことで,再発予防.さらにはスポーツパフォーマンスの向上も期待できます.
新しい試みですが,きっとみなさんのお役に立つことでしょう.

捻挫予防の基本
私の勤務先(または自院)では、捻挫を何度もくり返して困っている方や、これから捻挫をしないために体づくりをしたい方を対象に「おひねり先生Project」というプログラムを行っています。
このプログラムでは、以下のような内容を中心に、足首だけでなく全身の動きをチェックしていきます。
- 足首まわりの筋力トレーニング
- 股関節や体幹部の強化エクササイズ
- バランスや平衡感覚を高めるトレーニング
- 普段の歩き方や姿勢の確認
- 正しい靴やインソールの選び方指導
スポーツのパフォーマンスアップをめざす人にも効果が期待できますし、運動が苦手な人や日常生活で足首の痛みに悩んでいる人にも、わかりやすい形でサポートしています。

適切な靴の選び方
捻挫予防には、適切な靴の選び方も重要です。特に、スポーツをする際には、足首をしっかりとサポートするシューズやサポーターを選ぶことが推奨されます。適切な靴を使用することで、足首にかかる負担を軽減し、捻挫を予防することができます。

捻挫予防のトレーニング
それでは、実際にはどのように捻挫を予防すればいいのでしょうか。ここでは、代表的な方法を紹介します。
- ストレッチをしっかり行う
┗ 運動前や運動後だけでなく、普段からふくらはぎや足首まわりの筋肉を伸ばすように心がけましょう。体が硬いと、急な動きに対応しにくくなり、捻挫を起こしやすくなります。 - 正しいウォーミングアップ
┗ 運動を始める前には、ジョギングや軽い体操などで体を温める「動的ストレッチ」を行うと効果的です。急なダッシュや切り返し動作をする前に、足首や股関節をしなやかに動かせるよう準備することでケガのリスクを減らせます。 - バランストレーニング
┗ 片足立ちでバランスをとる練習や、バランスボードを使ったトレーニングなど、足首や体幹を安定させる練習をしましょう。うまくできるようになると、ちょっとした段差や不意な動きにも対応しやすくなります。 - 筋力トレーニング
┗ 足首を支える筋肉だけでなく、股関節や体幹の筋肉を鍛えることで、全身のバランスが整いやすくなります。スクワットやヒップリフト、プランクなどが手軽に始められるトレーニングです。 - 正しい靴・インソールの活用
┗ 足首をしっかりサポートしてくれる靴を選ぶことも大事です。特にスポーツシューズでは、かかとが安定し、足の指が無理なく動かせるサイズを選びましょう。インソールを自分の足に合わせることで、足首のぐらつきを減らすこともできます。
捻挫予防のストレッチ
捻挫予防には、適切なストレッチも欠かせません。特に、足首周りの筋肉を柔らかく保つことで、急な動きに対応しやすくなり、捻挫を予防ぐことができます。ストレッチは、運動前だけでなく、運動後や就寝前にも行うと効果的です。

まとめ:捻挫を防いで、スポーツも日常生活も快適に
「よくあるケガ」と思われがちですが、放っておくと長期的に足首が不安定になったり、スポーツでパフォーマンスを落としてしまうことがあります。一度捻挫してしまったら、RICE処置やリハビリをきちんと行い、再発予防に力を入れることが大切です。
予防のためには、普段のストレッチや筋力トレーニング、バランストレーニング、そして自分に合った靴選びなど、できることがたくさんあります。中学生の皆さんも、まずは「痛みがあるのに無理をしない」「体をしっかり動かして温める」など基本的なポイントを習慣化してみてください。
将来にわたってスポーツを楽しむためにも、足首のケアは欠かせません。捻挫を予防し、もし捻挫をしてしまってもきちんと治すことで、元気に運動を続けられます。ぜひ今回の記事を参考にして、自分の足首を守りながら、大好きなスポーツや日常生活を思いきり楽しんでくださいね。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【重要なポイントまとめ】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
- 捻挫は放置すると「捻挫ぐせ」がつきやすい
- 痛みや腫れがあればRICE処置+早めの受診を
- ストレッチ・筋トレ・バランストレーニングが再発防止のカギ
- 正しい靴選びやインソールも重要
- 焦って復帰すると逆効果。リハビリで足首の安定を
【参考文献】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
- Karlsson J, Eriksson BI, Renström P. “Subtalar instability and lateral ankle pain after lateral ligament injuries.” Foot Ankle Clin. 2006;11(3):429-439.
- Attenborough AS, et al. “Incident rate of ankle sprain recurrences in sporting activities: a systematic review and meta-analysis.” Sports Med. 2014;44(1):123-140.
- Hertel J. “Functional Anatomy, Pathomechanics, and Pathophysiology of Lateral Ankle Instability.” J Athl Train. 2002;37(4):364–375.
- Taniguchi A, et al. “Balance Training in Athletes to Prevent Ankle Sprain: A Systematic Review.” J Sport Rehabil. 2020;29(8):1037-1047.
- Wilkerson GB, Pinerola JJ, Caturano RW. “Surveillance of acute injuries in collegiate football, a prospective study.” Athletic Training. 1993;28(4):276-279.
参考URL: