ヘバーデン結節とは?原因・症状・治療法を徹底解説!動注療法とは?

はじめに
指の第一関節が腫れて痛い、曲がってきた――。
その症状、「ヘバーデン結節」かもしれません。
特に40代以降の女性に多く見られるこの病気は、関節リウマチとは異なり、加齢やホルモンバランスの変化などが関係しています。
本記事では、整形外科専門医の立場から、ヘバーデン結節の原因・症状・治療法・予防法をわかりやすく解説します。


ヘバーデン結節とは?

指先の関節に慢性的な炎症が起こり、関節軟骨がすり減ることで骨が変形し、コブのような膨らみ(結節)ができるのが特徴です。特に女性に多く、更年期以降の女性の約3割に発症すると報告されています(日本整形外科学会資料より)。
男性でも職業や手の使い方によって発症することがあります。

主な症状
ヘバーデン結節の症状は、進行段階によって変化します。
初期症状
・指の第一関節が腫れる
・ズキズキとした痛みや熱感
・物をつかむと痛い
・朝、指がこわばる感覚がある
この時期は炎症が強く、「指をぶつけたような痛み」を訴える方もいます。
中期~後期
・痛みが落ち着く代わりに関節が固まって動かしにくくなる
・指先が横に曲がって見た目が変形する
・関節にコブ(結節)がはっきりと見える
多くの方は数か月~1年ほどで痛みは軽くなりますが、変形は残ってしまうことが一般的です。

ヘバーデン結節の原因
ホルモンバランスの変化
閉経後の女性では、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌が減少します。
エストロゲンは関節や軟骨を守る作用を持つため、減少すると関節の変性が進みやすくなります。
遺伝的要因
家族に同じ症状を持つ方がいる場合、発症リスクが高まることが知られています。
手の使いすぎ(オーバーユース)
ピアノ・スマホ・手作業など、細かい動きを繰り返す作業を長年行っている人に多く見られます。
酸化ストレス・代謝異常
最近の研究では、関節の炎症に「酸化ストレス」「糖代謝異常」「AGEs(終末糖化産物)」が関係している可能性が示唆されています。

ヘパーデン結節の診断
整形外科では、以下のように診断します。
視診・触診

X線(レントゲン)検査

鑑別診断
関節リウマチ、乾癬性関節炎、痛風性関節炎などと区別します。

ヘパーデン結節の治療法
ヘバーデン結節は完治が難しい病気ですが、痛みを抑え、進行を遅らせる治療が可能です。
保存療法(手術しない治療)
安静・固定
特に就寝中や仕事中の衝撃を避けることが大切です。

薬物療法
消炎鎮痛薬(NSAIDs)の内服・外用
痛みが強い場合は関節内ステロイド注射を行うこともあります。
物理療法
温熱療法や超音波治療で血流を改善し、炎症を和らげます。
再生医療(PRP療法など)
近年注目されているのが、自己血小板を利用したPRP(多血小板血漿)療法です。
炎症を抑え、組織修復を促進する効果が報告されており、初期~中期の痛みに有効なケースがあります。
動注療法
一番オススメの治療と言える治療です。ヘバーデン結節にはモヤモヤ血管という血管という異常な血管ができていることが近年の研究で判明してきました。その異常な血管を抗生物質を注射することで塞ぐことができます。これは奥野クリニックの奥野医師が開発した治療で当院も認定施設として行っております。痛みの改善にはかなり期待ができ、当院で行っている印象としてもとても効果のある治療と考えています。
保険が効かず自費の治療となりますが、非常におすすめの治療です。
手術療法
痛みが強く日常生活に支障をきたす場合、以下の手術が検討されます。
関節固定術
痛みを取るために関節を固定する方法
骨棘切除術
突出した骨を削る方法(変形が軽い場合に限定)

予防とセルフケア
指の酷使を避ける
長時間のスマホ操作や細かい作業はこまめに休憩をとりましょう。
関節を温める
冷えは血流を悪化させ、痛みを助長します。
温めることが最大のケアです。温タオルや手浴(40℃程度)がおすすめです。
適度なストレッチ
痛みが落ち着いたら、指を軽く曲げ伸ばしする体操を続けましょう。
過度なストレッチは逆効果なので、「気持ちいい範囲」で行うことがポイントです。
食生活の見直し
抗酸化作用のあるビタミンE・C・オメガ3脂肪酸を多く含む食材(ナッツ、魚、緑黄色野菜など)を意識して摂りましょう。

放置するとどうなる?

よくある質問(Q&A)

ヘバーデン結節はリウマチですか?

違います。リウマチは免疫異常で関節全体に炎症が起こりますが、ヘバーデン結節は指先の変形性関節症です。血液検査で区別できます。

痛みはどれくらい続きますか?

多くの方は半年〜1年で痛みが落ち着きます。ただし、炎症が強い場合は長引くこともあります。

治らない病気ですか?

変形した骨を元に戻すことはできませんが、痛みを抑えたり進行を遅らせることは十分可能です。

再生医療(PRP療法)は効果がありますか?

PRP療法は自己の血液から取り出した成長因子で炎症を抑える治療です。初期の痛みに有効なケースが多く報告されています。

痛みが強いときに湿布は効果がありますか?

一時的な痛みには冷却タイプの湿布が有効です。ただし、慢性期には温める方が血流改善に役立ちます。

テーピングの方法は?

DIP関節を軽く曲げた状態で固定し、無理に伸ばさないように貼ります。長時間は避け、就寝時や作業時に限定しましょう。

どの指に多いですか?

中指と人差し指に多く、小指にも見られます。親指にはあまり起こりません。

ヘバーデン結節は遺伝しますか?

完全な遺伝ではありませんが、家族にあると発症しやすくなる傾向があります。

運動しても大丈夫ですか?

痛みが強いときは安静を優先。痛みが落ち着いたら、血流を促す軽い運動(手の開閉など)はおすすめです。

放置するとどうなりますか?

痛みは自然に落ち着くことが多いですが、関節が固まり変形が進行します。早めに治療を受けることで進行を抑えられます。

まとめ
・ヘバーデン結節は指の第一関節に起こる変形性関節症・更年期以降の女性に多く、ホルモンや手の使いすぎが関係・初期は痛み
・腫れ、中期以降は変形が進む・保存療法・再生医療・手術で症状改善が可能
・冷やさず、温めるケアが重要
指の変形や痛みが気になる場合は、我慢せず整形外科を受診してください。
早期の対応が、変形を防ぐ一番の治療になります。


参考文献
1.日本整形外科学会「変形性指関節症(ヘバーデン結節)」
2.Arthritis Research & Therapy. 2019;21(1):152.
3.吉村典子ほか:日本人女性におけるヘバーデン結節の疫学的研究. J Orthop Sci. 2014.






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