膝に水がたまったら抜くべき?何度も抜くとクセになるのかを専門医が解説

分類なし

膝の水は抜くとクセになる?その誤解を解きます

「膝に水がたまっていますね。抜きましょうか。」

そう言われたとき、多くの方がこう聞き返します。

「水を抜くとクセになるんですよね?」

これは外来で非常によくある質問です。
しかし、結論から言うと――

水を抜くこと自体がクセになる医学的根拠はありません。

ではなぜ何度もたまるのでしょうか。
そして、抜くべき場合と抜かなくてよい場合の違いは何でしょうか。

今回は「膝の水」の正体から、再発を防ぐ考え方、さらに再生医療という選択肢まで、わかりやすく解説します。


そもそも「膝の水」とは何か?

膝の水とは、正確には「関節液(かんせつえき)」です。

実は、関節液はもともと膝の中に存在しています。
これは関節の動きをなめらかにし、軟骨に栄養を届ける重要な液体です。

軟骨には血管がありません。
そのため、関節液が栄養を運ぶ役割を担っています。

つまり――
水があること自体は悪いことではありません。

問題は「量が増えている」ことです。


なぜ膝に水がたまるのか?

膝に水がたまる最大の原因は「炎症」です。

特に多いのが、変形性膝関節症です。

軟骨がすり減る

骨同士の摩擦が増える

炎症が起きる

関節液が増える

この流れが典型的です。

そのほかにも、

  • 半月板損傷
  • 靭帯損傷
  • 痛風や偽痛風
  • 関節内感染

重要なのは、
水は原因ではなく“結果”であるということです。


膝の水を抜くメリット

膝の水を抜く(関節穿刺)ことには、主に3つの意味があります。

① 痛みの軽減

大量にたまった水は関節内圧を高め、痛みや可動域制限を引き起こします。
抜くことで圧が下がり、動きやすくなることがあります。

② 診断のため

抜いた液を検査することで、

・尿酸結晶 → 痛風
・細菌 → 感染
・血液混入 → 外傷

などが判明します。

特に感染は緊急対応が必要なため、診断は非常に重要です。

③ 炎症のコントロール

水を抜いた後にヒアルロン酸などを注入することで、炎症抑制や潤滑改善が期待できます。


「水を抜くとクセになる」は本当?

結論:医学的根拠はありません。

水が再びたまるのは、
炎症が続いているからです。

例えるなら、蛇口が開いたままの状態です。
バケツの水を捨てても、蛇口を閉めなければまたたまります。

水を抜くことが原因で増えるわけではありません。


何度も水がたまる人が考えるべきこと

何度も抜いている場合、問題は「水」ではなく「炎症が慢性化していること」です。

その背景には、

  • ・軟骨の変性進行
  • ・筋力低下
  • ・体重過多
  • ・アライメント異常

などがあります。

つまり、対症療法だけでは限界があるのです。


根本治療という考え方

炎症の悪循環を断ち切るためには、

  1. 体重管理
  2. 大腿四頭筋強化
  3. インソール調整
  4. 注射療法
  5. 手術治療

などの選択肢があります。

その中で近年注目されているのが「再生医療」です。


再生医療は膝の水に効果があるのか?

再生医療の代表的なものにPRP(多血小板血漿)療法があります。

自分の血液から成長因子を抽出し、関節内に注射します。

目的は「軟骨を完全再生すること」ではなく、
炎症性サイトカインを抑制し、関節内環境を整えることです。

複数の研究で、変形性膝関節症において疼痛改善効果が報告されています
(American Journal of Sports Medicine, 2013 ほか)

炎症が抑えられれば、結果として水がたまりにくくなる可能性があります。

ただし、すべての方に効果があるわけではありません。
進行が強い場合は手術が適応となることもあります。


こんな方は治療方針を見直すタイミング

・月に何度も水を抜いている
・ヒアルロン酸の効果が弱くなってきた
・手術は避けたい
・活動レベルを維持したい

このような方は、炎症コントロールという観点で治療の見直しを検討してもよいかもしれません。


Q&Aコーナー

Q1. 水を抜くと軟骨が減りますか?
減りません。関節液を抜くことが軟骨破壊につながるというエビデンスはありません。

 

Q2. 自然に水は引きますか?
軽度の炎症であれば吸収されることがあります。ただし原因次第です。

 

Q3. 温めるのと冷やすのはどちらがいい?
腫れや熱感が強い急性期は冷却が基本です。

 

Q4. ヒアルロン酸は意味がありますか?
炎症抑制と潤滑改善の効果が期待できます。症状によって選択されます。

 

Q5. PRPで軟骨は再生しますか?
完全再生ではありません。炎症制御と疼痛改善が主な目的です。

 

Q6. 水があると将来手術になりますか?
必ずしもそうではありません。進行度と症状次第です。

まとめ

膝の水は「悪者」ではありません。
炎症の結果として増えているサインです。

水を抜くことがクセになるのではなく、
炎症が続いているから繰り返すのです。

大切なのは、

水を抜くかどうかではなく、炎症をどうコントロールするか。

その選択肢の中には、再生医療も含まれます。

不安なまま我慢するのではなく、
正しく理解して、自分に合った治療を選ぶことが何より大切です。