はじめに
「歩くと足の付け根が痛い」「立ち上がるときに股関節がズキッとする」
こうした症状で当クリニックに受診される方の中には、
変形性股関節症

と診断される方が少なくありません。
変形性股関節症では、日常生活のちょっとした動き方や運動の選び方によって、痛みが強くなったり、症状が進行しやすくなったりします。
この記事では、
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変形性股関節症で避けたい動作・運動
-
その代わりにおすすめできる運動や生活の工夫
を分かりやすく解説していきます。
1. 変形性股関節症とは?
股関節は、骨盤の「受け皿」と太ももの骨の「ボール」が組み合わさった球関節です。
関節の表面は、衝撃を吸収する 関節軟骨 で覆われており、なめらかに動くようになっています。
変形性股関節症では、
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関節軟骨がすり減る
-
骨どうしの隙間が狭くなる
-
骨のトゲ(骨棘/こっきょく)ができる
といった変化が起こり、動かしたときの痛みや可動域の制限が生じます。
進行すると、
など、日常生活のさまざまな場面で支障が出てきます。
2. なぜ「やってはいけないこと」があるのか
股関節は体重を支える大きな関節です。
同じ体重でも、「どのように動くか」によって関節への負担は大きく変わります。
◆ 股関節にかかる主な負担のイメージ

軟骨がすり減っている股関節に、「曲げすぎ」「ひねりすぎ」「衝撃の大きい動き」が繰り返されると、
といった悪循環に陥りやすくなります。
そのため、特に負担が大きくなりやすい動作や運動は「避けた方がよい」という考え方になります。
3. 日常生活で避けたい動作・習慣
まずは、日常生活の中で股関節に負担をかけやすい代表的な動作を整理します。
3-1. 深いあぐら・長時間の正座・和式トイレ
股関節を深く曲げた状態や、内側にひねった状態で長時間いる姿勢は、関節に強い圧がかかります。

✖ NG例
⭕️おすすめの工夫
完全に禁止というよりは、「長時間続けない・深く曲げすぎない」ことがポイントです。
3-2. 階段や坂道を「痛みをこらえて」繰り返す
階段や坂道は、平地よりも股関節への負担が大きくなります。

✖ NG例
こういった場合でも、股関節の痛みが強い時期に無理を続けるのはおすすめできません。
⭕️おすすめの工夫
3-3. 重い荷物を片側だけで持つ
重い荷物を片手だけで持つと、骨盤が傾き、片側の股関節に負担が集中します。

✖ NG例
⭕️おすすめの工夫
4. 「動かさない」は逆効果?上手な付き合い方
ここまで「やってはいけないこと」を中心にお伝えしましたが、
では「全く動かさず、じっとしているのが良いのか」というと、それも問題があります。
まったく動かさない状態が続くと
という悪循環に陥りやすくなります。
急性期と慢性期で考え方を分ける
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痛みが非常に強い「急性期」
→ まずは負担を減らし、炎症を落ち着かせることが優先 -
痛みがある程度落ち着いている時期
→ 主治医や理学療法士と相談しながら、
少しずつ運動量を増やし、筋力・柔軟性を保つ
「がんばりすぎて悪化させない」
「こわがりすぎて動かなさすぎない」
このバランスがとても重要です。
6. 変形性股関節症でもおすすめの運動
比較的股関節への負担が少ないと考えられている運動について紹介します。
実際に始める前に、必ず主治医や担当理学療法士と相談してください。

平らな場所でのウォーキングは、多くのガイドラインでも推奨されている運動です。
まずは 10〜15分程度 から痛みが強くならない範囲で、少しずつやってみましょう。
自転車やエアロバイクは、体重がサドルに分散するため、股関節への負担が比較的少ない運動とされています。サドルをやや高めに設定し、股関節を深く曲げすぎない痛みの出ない範囲で、軽めの負荷からスタートしましょう。
水の浮力により、体重負担が軽くなるのが水中運動の大きなメリットです。プールでの前向き・後ろ向き・横向きの歩行や水中での軽い股関節の曲げ伸ばし運動などは、股関節にかかる負担を抑えつつ、筋力や持久力の維持に役立ちます。足元が不安な方は、水中で使える手すりやビート板を活用しましょう。
股関節を安定させるうえで特に重要なのが、お尻の横にある「中殿筋」です。
代表的なトレーニングの例:
サイドレッグレイズ(横向きでの足上げ)
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横向きに寝て、下側の足は軽く曲げる
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上側の足をまっすぐ伸ばし、やや後ろ気味に上げる
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痛みのない範囲で、片側10回前後を目安に
回数やフォームは、リハビリ担当者に確認してもらうとより安全です。
7. 体重管理の重要性
体重が1kg増えると、歩行時にはその数倍の負担が股関節にかかるとされています。
そのため、数kgの減量でも股関節の痛みが軽くなることがあります。
ただし、ここで注意したいのは、
という点です。
急激に体重を落とすことよりも、1〜2kgをゆっくり減らし、その状態を維持することを目標にしましょう。
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8. こんな症状があれば早めに受診を
次のような症状がある場合は、自己判断で運動を続けるのではなく、
早めに整形外科の受診をおすすめします。
⬜︎安静にしていても股関節がズキズキ痛む(夜間痛)
⬜︎痛みで夜目が覚める足の付け根だけでなく、膝や腰まで痛みが広がってきた
⬜︎股関節の動きが急に悪くなった
⬜︎つまずきやすくなった、歩幅が極端に狭くなった
画像検査(レントゲンやMRI)で状態を確認し、
保存療法(リハビリ・薬・注射)や手術のタイミングを含めて、
一人ひとりに合った治療方針を一緒に考えていくことが大切です。
また、近年では変形性股関節症に対して再生医療が効果的と言われています。
手術以外の第3の選択肢として再生医療も含めて考えていく必要があります。
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9. まとめ
最後に、変形性股関節症で「やってはいけないこと」のポイントを整理します。
・深いあぐら・長時間の正座・和式トイレでのしゃがみ込み
・階段や坂道を、痛みをこらえながら毎日長時間利用すること
・重い荷物を片側だけで持つ、足を組む、片足重心のクセ
・痛みを我慢した無理なストレッチや深いスクワット
・ランニング・ジャンプなどの高衝撃運動
・高重量・深い角度での脚の筋トレ
・急な方向転換やストップが多い競技スポーツ
・不整地でのランニングや、重い荷物を背負っての登山
※一方で、適切な運動はむしろ症状の安定に役立ちます。
・平地でのウォーキング
・自転車・エアロバイク
・プールでの歩行・水中運動
・中臀筋をはじめとした股関節周囲の筋トレ
「やってはいけないこと」を知り、避けるべき動きを上手に減らしながら、
自分に合った運動をコツコツ続けていくことが、股関節と長く付き合うためのポイントです。
10. Q&A よくある質問
Q1. 変形性股関節症でも歩いていいのですか?
A. 痛みが非常に強い急性期を除けば、平地でのウォーキングは基本的に推奨されることが多い運動です。
ただし、
といった点に注意し、無理のない範囲で行ってください。
Q2. 正座やあぐらは完全に禁止ですか?
A. 必ずしも「一切ダメ」というわけではありませんが、長時間続けることや、股関節を深く曲げてしまう姿勢は避けた方が無難です。
どうしても必要な場面では、
などの工夫をおすすめします。
Q3. スポーツはもう諦めるしかありませんか?
A. 競技レベルでの激しいスポーツは制限が必要な場合がありますが、
強度を調整したり、種目を選ぶことで続けられるケースも多くあります。
など、具体的な方法については、診察時にお気軽にご相談ください。
変形性股関節症は「一度悪くなったら終わり」という病気ではありません。
生活の工夫と適切な運動・治療によって、症状の進行をゆるやかにし、快適な生活を長く保つことが十分に可能です。
股関節の痛みでお悩みの方は、我慢しすぎず、
⬇︎⬇︎早めにご相談いただければと思います。⬇︎⬇︎







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平地を普通に歩く:体重の約2〜3倍
階段の昇り降り:体重の約3〜5倍
走る・ジャンプする:それ以上の負荷が一瞬にかかる