ロキソニン(ロキソプロフェン)とは
薬理作用と薬物動態
ロキソニン®は市販 されている痛み止め でプロドラッグ型NSAIDsと呼ばれるもので、体内で変換され、炎症の元となる酵素を阻害して炎症・痛み・発熱を抑える薬です。飲んだ後30–45 分で血液の中の濃度がピークに達し、半減期は約1.3 時間と言われています。腎臓から体内に出て、軽度の腎機能低下があると体内に残る薬剤の量が上昇します。
貼付剤の特徴
血中移行は経口の2〜3 %くらいと言われており、腎障害や薬による皮膚症状はゼロではありません。
市販薬と医療用の違い
市販薬(ロキソニンS) | 医療用ロキソニン錠 | |
1回量 | 60 mg | 60 mg(必要により120 mg) |
1日最大 | 180 mg | 180 mg(頓用) |
効能 | 頭痛・生理痛など12症候 | 医師が適応判断 |
添加成分 | カフェイン・酸化Mg配合製剤あり | なし |
代表的なロキソニン の副作用
消化器系(発生頻度 1〜5 %)
胃痛・胸やけ・悪心が最多。短期でも胃/十二指腸潰瘍へ進展し得るため、PPI併用が推奨されます。
“危険な”症状 Red flag sign
- 黒色便・下血
便が黒みがかったりしている場合は注意が必要です。 - コーヒー残渣様嘔吐
コーヒーを飲んでいないにも関わらずコーヒーのようなものを嘔吐すると気は注意です。
腎障害(0.1 %未満だが高リスク)
腎血流依存性で、利尿薬・ACE阻害薬併用や脱水時に急性腎不全(AKI)を招くことがあります。腎不全が増悪すると透析なども検討する必要があるために注意が必要です。
肝障害・皮膚アレルギー
AST/ALTという肝臓の酵素が上昇すること稀ですが劇症肝炎という恐ろしいこともありますが。薬疹からSJS/TENに進展するケースは緊急入院が必要です。
重篤副作用と“赤旗”一覧
副作用 | 典型症状 | 即時対応 |
消化管出血 | 黒色便・吐血 | 内視鏡 |
AKI | 乏尿・浮腫 | 点滴+腎機能モニタ |
アナフィラキシー | 呼吸困難・蕁麻疹 | 救急要請 |
SJS/TEN | 高熱+水疱 | 入院治療 |
副作用を高めるリスク因子
患者背景 これらがある場合は注意が必要です。
- 65歳以上
- 潰瘍既往・CKD・心不全
- 脱水・発熱
併用薬
- ステロイド・抗凝固薬・低用量アスピリン
胃から出血がしやすい状態です! - SSRI・ACE阻害薬/ARB・利尿薬
他のNSAIDsとの比較
項目 | ロキソプロフェン | イブプロフェン | セレコキシブ |
半減期
(効きにくくなる時間) |
1.3 h | 1.8 h | 11 h |
胃からの出血リスク | 中等度 | 中等度 | 低 |
腎臓へのリスク | 中等度 | 中等度 | 低〜中 |
副作用を防ぐセルフケア12箇条
- 持病・併用薬を医師に申告
- 最少有効量・短期使用
- 食後30 分以内にコップ1杯の水
- PPI/レバミピド併用
- こまめな水分補給
- 発熱・マラソン後は極力避ける
- 多量飲酒を控える
- 総合感冒薬との重複チェック
- 週10回超の使用は受診
- 高齢者は3か月ごとに血算・腎肝機能
- 皮疹・浮腫・黒色便は即中止
- 長期疼痛は原因治療と併用
よくある質問(Q&A)
Q1 授乳中の服用は大丈夫でしょうか?
短期頓用ならほぼほぼ問題ありませんが、乳児に発疹・下痢があれば中止しなければいけません。
Q2 妊娠中は大丈夫でしょうか?
28週以降は胎児動脈管閉鎖の恐れがあり禁忌となりますので、初期もなるべく避けて、アセトアミノフェンを使用しましょう。
Q3 服用後の飲酒は?
アルコールは潰瘍・肝障害リスクが増加しますので注意が必要です。特に、大量飲酒は厳禁です。
Q4 高齢の親が毎日服用していますが、大丈夫ですか?
腎機能悪化の恐れ。定期採血と用量見直しを。
Q5 片頭痛で効かないのですが、より強くした方がいいでしょうか?
薬物乱用頭痛の可能性があります。薬が逆に頭痛を起こすこともありますので、頭痛外来への受診を勧めます。月10日を超えるNSAIDsは頭痛悪化因子です。
Q6 関節リウマチで連日使用してますが、大丈夫?
NSAIDsは対症療法ですので、DMARDsなどリウマチの原因治療を行える薬を調整しましょう。主治医と検討された方が良いです。
医療者向け補足
長期投与管理
- 原則4週間以内としましょう。継続時はPPI併用+3〜6か月ごと血算・肝腎機能・尿検査が望ましいでう。
- eGFR < 45 mL/min/1.73㎡またはCr上昇0.3 mg/dL超なら中止またはCOX-2選択薬へ。
まとめ
ロキソニンは速効で頼れる鎮痛薬ですが、消化管潰瘍・腎障害・SJS/TENなど重篤副作用を伴う可能性があります。「市販だから安全」ではなく、正しい知識とセルフケア、医療者との連携でリスクを最小化しましょう。 気になる症状があれば自己判断せず早めに受診してください。
参考URL
・第一三共ヘルスケア ロキソニンS製品情報
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/loxonin-s/
・ロキソニンS 添付文書PDF
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/package_insert/pdf/loxonin-s_1.pdf
・PMDA インタビューフォーム一覧
https://www.info.pmda.go.jp/psearch/html/interview_form_list.pdf
・厚生労働省 副作用モニター結果
https://www.mhlw.go.jp/。