冬の寒さ!ぎっくり膝 には注意が必要!膝 完全ガイド

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「ぎっくり膝」完全ガイド

—冬に急に膝が痛くなる理由と、今日からできる対策—

冬の朝、「立ち上がったら膝がズキッ」「しゃがんだら急に伸びない」。こんな“ぎっくり膝”に困る人が増えます。これは正式な病名ではありませんが、寒さ+ちょっとした動きをきっかけに出る急な膝の痛みを、わかりやすく表した言い方です。多くはクッションである半月板(はんげつばん)のトラブル変形性膝関節症の一時的な悪化膝のお皿(膝蓋骨)まわりの滑りの悪さなどが関係します(参考:AAOS OrthoInfo「Meniscus Tears」https://orthoinfo.aaos.org/en/diseases–conditions/meniscus-tears/、OARSI 2019ガイドライン https://www.oarsijournal.com/article/S1063-4584(19)31116-1/fulltext)。


1. なぜ冬に“ぎっくり膝”が増えるの?

① 体の“油”が固くなるから

筋肉・腱・靭帯は、温かいほどやわらかく冷えると硬くなります。冷えると“伸びにくいゴム”のようになり、動き始めに負担が集中してしまいます(参考:Petrofsky 2013/加温で腱の柔らかさが上がる https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23933600/)。

② 関節の“潤滑油”もサラサラ度が下がる

膝の中には滑液(かつえき)という液体があり、これが関節の滑り(なめらかさ)を助けています。温度が上がると粘りが減って動きやすく、逆に冷えると粘って動きづらくなります(参考:Hasnain 2023 Sci Rep https://www.nature.com/articles/s41598-023-44482-z、Reimann 1975 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1153980/)。

油は温めるとさらっとしていますが、冷えると固くなったりしますよね。そんなイメージです!

③ 天気も少し関係する

大規模研究では、湿度が高い・気圧が低い・風が強い日に、痛みが強くなりやすい傾向が見つかりました。あくまで**“少し関係がある”**レベルですが、体感と合います(参考:Dixon 2019 npj Digital Medicine https://www.nature.com/articles/s41746-019-0180-3)。

急に寒くなった日は痛みを感じるという経験がある方は多いと思います。また、雨の日に痛くなるという方も多いのではないでしょうか?

まとめ:冬は関節の油が固く周りの組織も硬い。そこへ急な動きが重なると、“ぎっくり膝”が起きやすいのです。


2. これが“ぎっくり膝”のサイン

  • 動き出しのズキッとする痛み(特に朝や外に出る前)

  • 曲げ伸ばしの引っかかり感(半月板のトラブルで起こりやすい:参考 AAOS OrthoInfo 上)

  • 階段や立ち上がりでのこわばり(変形性膝関節症の悪化で多い:参考 OARSI 2019 上)

赤い・とても腫れて熱い・発熱があるなどは感染や結晶性関節炎(痛風、偽痛風)などの可能性もあり、すぐ受診してください(参考:AAOS「Common Knee Injuries」https://orthoinfo.aaos.org/en/diseases–conditions/common-knee-injuries/)。


3. 今日からできる「3ステップ」——合言葉は温める→動かす→広げる

ステップ1:温める(5〜10分)

ステップ2:動かす(90秒ルーティン)

ステップ3:広げる(痛み0〜3/10で)

  • 痛みを10段階で3以下に保ちながら、可動域と回数を少しずつ増やす

  • 翌朝の痛みが強く残らない範囲で調整。運動は習慣化がカギです(参考:OARSI 2019 上)。


4. “ぎっくり膝”になってしまった直後の対処

  1. ケガをした覚えがある(転倒・ぶつけた)?
    まず冷却し、腫れや不安定感が強ければ受診(靭帯・半月板の可能性:参考 AAOS 上)。

  2. 明らかな外傷はない・寒い朝に突然?
    温める → 90秒ルーティン → 痛みが落ち着いたら短い歩行

    • 温めは靭帯・腱の柔らかさ動き始めを助けます(参考:Petrofsky 2013 上)。

    • 入浴後10分以内にヒールスライドや膝伸ばしを行うと、滑りの良い状態を活かせます(参考:Hasnain 2023 上)。

やってはいけないこと

  • いきなり深くしゃがむ・ジャンプなど強い負荷

  • 長時間じっとして冷やしてしまう

  • 痛みを我慢してフォームが崩れる動き


5. 生活のコツ(再発予防)

  • 45〜60分に一度は立つ。立ったついでに膝伸ばし10回でOK。

  • 外出は小股でスタート→温まってから歩幅を広げる

  • 靴は滑りにくい底かかとが安定するもの。

  • サポーター保温と“感覚の補助”として有効な人も。ただし頼りすぎず大腿四頭筋・お尻の筋肉をしっかり使う(参考:OARSI 2019 上)。

  • 体重管理と週150分程度の中等度運動が、膝の健康を守ります(参考:OARSI 2019 上)。


6. 受診の目安(赤信号)

  • 急に大きく腫れた/熱を持って真っ赤

  • 膝が引っかかって完全に伸びない(ロッキング)

  • 踏ん張れない・ガクッと崩れる感じ(不安定感)

  • 発熱・体調不良を伴う
    → これらは半月板断裂・靭帯損傷・感染などのおそれ。早めに整形外科へ(参考:AAOS OrthoInfo 上)。


7. よくある質問(Q&A)

Q1. ぎっくり膝は“冷やすべき”?“温めるべき”?

 

院長
院長

A. 外傷が明らかならまず冷却。そうでなければ温め→軽い運動が基本です。温めは靭帯や腱の柔らかさを高め、動き出しを助けます

(参考:Petrofsky 2013 上/Cochrane 温熱療法 上)。

 

Q2. お風呂はどれくらいはいるとよい?

 

院長
院長

A. 目安は10分前後湯上がり10分以内にヒールスライドや膝伸ばしを行うと効果的ですよ。

(参考:Hasnain 2023 上)

 

Q3. ストレッチはどのタイプが良い?

 

院長
院長

A. 準備はダイナミック(反動なしのリズム運動)、そして仕上げに静的ストレッチを短くおこなうとよいでしょう。運動前に静的を長く行うと力が出にくくなることがあります。

(参考:Li 2023 上)

 

Q4. サポーターは毎日つけていい?

 

院長
院長

A. 保温と安心感には役立ちますが、筋力や動きの練習の代わりにはならないので、サポーターの使いっぱなしは避けましょう。

(参考:OARSI 2019 上)

 

Q5. 朝一番が一番つらい。どうすれば?

院長
院長

A. 起きたら膝を温めることからはじめましょうヒールスライド10回膝伸ばしを10回→そして足首のポンピング。その後に小股で歩き出すのが安全ですね。

(参考:Hasnain 2023 上、OARSI 2019 上)

Q6. 痛みが3/10以下ってどう判断する?

院長
院長

A. 10が「我慢できない痛み」だとすると、3は“気になるけど動ける”くらいというイメージです。この範囲なら動いてOK。翌朝に痛みが強く残らないかもチェックが必要です。

(参考:OARSI 2019 上)

Q7. 階段で特に痛いのはなぜ?

院長
院長

A. 階段は曲げ伸ばし+体重負荷が同時にかかります。お皿の滑りが悪いと痛みやすいので、太もも前(大腿四頭筋)を目覚めさせる運動が役立ちます。

(参考:OARSI 2019 上)

Q8. ロッキングって危険?

院長
院長

A. 膝が引っかかって伸びない状態は、半月板の断裂などのサイン。受診が必要ですね。

(参考:AAOS OrthoInfo 上)

Q9. 天気で膝が痛む気がするのは気のせい?

院長
院長

A. 完全な気のせいではない可能性があります。湿度・気圧・風と痛みの相関が報告されています(“ある程度関連性あり”くらいのニュアンスです)。

(参考:Dixon 2019 上)

Q10. どのくらい続ければ良くなる?

院長
院長

A. 個人差はありますが、毎日少しずつの積み重ねが近道です。週150分の中等度運動を目標に、まずは毎日90秒ルーティンから始めましょう。

(参考:OARSI 2019 上)


8. 賛否・注意点も知っておこう(バランスのとれた見方)

  • 温熱療法の賛否楽になる人が多い一方、エビデンスの質は中程度です。やけど長時間の貼りっぱなしには注意(参考:Cochrane 温熱療法 上)。

  • ストレッチの賛否準備はダイナミックが有利という研究が増えていますが、種目や個人差があります。翌朝の痛みで調整を(参考:Li 2023 上)。

  • 天気との関係:関連は**“少し”**。予報だけで不安になりすぎないことも大切です(参考:Dixon 2019 上)。


9. きょうのチェックリスト(保存版)

  • 温めた?(入浴・温感パック・防寒)

  • 90秒ルーティンやった?(足踏み→足首→ヒールスライド→膝伸ばし)

  • 痛み0〜3/10で止めた?(翌朝チェック)

  • 小股で歩き出した?(温まってから歩幅UP)

  • 赤・熱・強い腫れ・ロッキングは要受診!(AAOS 参照)


まとめ

ぎっくり膝寒さ関節の油が固くなり、周りの組織も硬くなるところへ初動の負担が重なって起こります。温める→動かす→広げるの3ステップと、毎日の90秒ルーティンで、再発しにくい膝を作りましょう。赤信号があれば早めに受診。それが安全で最短の回復ルートです(参考:Hasnain 2023、Petrofsky 2013、OARSI 2019、AAOS)。


膝の痛みについての動画はこちら

参考文献・URL(本文中に随所で引用)

この記事を執筆した人
宇賀治 修平
  • 医学博士
  • 日本整形外科学会整形外科専門医
  • 日本足の外科学会認定医
  • 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
  • 日本骨粗鬆症学会認定医
  • 日本整形外科学会認定リハビリテーション医