■はじめに
「漫画ばかり読んで姿勢が悪くなるんじゃない?」
「視力が落ちるって本当?」
「寝転んで読むと身体に悪そう…」
整形外科クリニックでは、漫画に関する相談は意外に驚くほど多いです。
特に、
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子どもが漫画を読みすぎる
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姿勢が悪くなる
-
目の健康が心配
といった声を毎日のように耳にします。
今回の記事は、整形外科目線で
「漫画は健康に悪いのか?」
「読んでも大丈夫な正しいルールは?」
をわかりやすく紹介します。ぜひ最後までご覧になってください!
■結論:漫画は“悪”ではありません
「漫画は読んでOKです。整形外科的にも“悪いもの”ではありません。」
世の中では、漫画やゲームを「悪いもの」と捉える風潮がありますが、
医学的に言うとこれは正確ではありません。
問題なのは漫画という“コンテンツ”ではなく、
読み方・姿勢・距離・時間
といった“環境”にあるのです。
実際私自身も漫画を読むことで得られた知識や語彙、そして得られない感情や体験はかけがえないものだと感じています。

■漫画が「悪者扱い」されてきた理由
漫画そのものに問題があるというより、
これまでの読み方が「身体に負担をかけやすかった」ためです。
●① 顔の目の前で読む
漫画を5〜10cmの距離で読む癖。
これは首の角度が深くなり、頸椎(首の骨)に大きな負担をかけます。
首が前に倒れる角度が深くなるほど、
頭の重さは 最大20kg以上の負荷 になります。
●② 長時間同じ姿勢
漫画は夢中になりやすく、気づいたら1時間以上経っていることがよくあります。
この「同じ姿勢を続ける」ことが、首・肩・腰を痛める最大の原因です。
●③ 寝転んで読む
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うつ伏せ → 首が反り返る
-
仰向け → 肩と腕が疲れる
-
横向き → 背骨がねじれる
どの体勢も身体にとっては負担が大きい。
●④ 夜遅くまで読む
漫画が面白いあまり、気づけば寝不足に。
睡眠不足は子どもの成長にも、日中の集中力にも大きく影響します。

■漫画で起こりやすい身体のトラブル
●首の痛み(スマホ首・ストレートネック)
顔を前に突き出して読む姿勢は、首の筋肉・関節に負担をかけます。
●肩こり・腰痛
片側に身体を倒す、寝転んで読む、ソファに深く沈むなどの姿勢は、
腰と肩に負荷がかかりやすい。
●腱鞘炎(親指の負担)
漫画を片手で長時間支えると、親指の付け根の腱に負担が集中し、
腱鞘炎を引き起こすリスクがあります。
●目の疲れ
視力が“急に悪くなる”わけではありませんが、
ピント調節の筋肉が疲れることで一時的に見えにくくなることがあります。

■ポイント:漫画は“読み方”を整えれば安全になる
整形外科医として最も伝えたいのは、
漫画=悪ではない。環境が悪いと健康に悪い
ということです。
■漫画を読んでもOK!整形外科医がすすめる“3つの基本ルール”
ここでの内容をまとめると次の3つです。
① 読む距離は30〜40cm(腕1本分)
漫画を目の前5cmで読んでしまう癖は、
首・目・肩の負担を一気に増やします。
理想は 腕1本分より少し短い距離=30〜40cm。
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近すぎ → 目の筋肉が疲れる
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遠すぎ → 無理に前のめりになる
最適な距離は“自然に背すじが伸びる距離”です。
② 姿勢は“背すじゆるっと正しい姿勢”
整形外科医がすすめる「漫画姿勢」はシンプルです。
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肘の角度:90度
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足:床につく
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背中:丸めない
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あご:軽く引く
とくにソファで読むと、無意識に猫背になりやすいため
できれば椅子に座って読むのがおすすめ。
ソファで読む場合は、背中にクッションを入れて“背もたれを立てる”と姿勢が整います。
③ 30〜40分読んだら5分休憩
漫画はストーリーに集中しやすく、
気づいたら「2時間」読んでいた…というケースも珍しくありません。
しかし身体の疲れは“合計時間”ではなく
“連続して同じ姿勢でいた時間”で決まります。
整形外科医として最もおすすめなのは——
👉 30〜40分読んだら、5分休憩
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首のストレッチ
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深呼吸
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背伸び
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目を閉じる
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遠くの景色を見る
この5分だけで、目・首・腰の負担は大幅に減ります。

■寝ながら読むのは絶対にNG
これだけはハッキリと言います。
「寝ながら読むのは一番ダメです(笑)」
理由は3つ。
●うつ伏せ
首が反り返り、頸椎に大きな負担。
“ストレートネック”の原因になりやすい。
●仰向け
腕が疲れやすく、結果的に首が前に出る。
肩こりの原因。
●横向き
背骨のねじれが強く、腰痛になりやすい。
どの姿勢も、整形外科医の目線では「危険な姿勢」です。

■漫画を読むことの“意外なメリット”
現在多くの研究でも注目されている意外なメリットですが、
漫画は身体さえ守れば メリットがとても多い 文化です。
●① 想像力が鍛えられる
キャラの心情やストーリーの背景を読むことで“想像する力”が育つ。自分では体験できない経験を得ることができます。
●② 語彙力が増える
漫画は文章量が多く、難しい言葉も登場します。キャラクターがどういう意味でこれを言っているかなどは言葉を調べるモチベーションにもなりますし、語彙が確実に広がります。
大人は本などの文字から情景を描くことができますが、子供の場合はそこまでの能力はないことがあります。それを絵で補正してあげることができるのが、漫画だと言えます。
●③ 読解力アップ
コマの流れを読み解く「視覚的読解力」も鍛えられる。
●④ ストレス解消
リフレッシュ効果は科学的にも認められています。
●⑤ 親子のコミュニケーションになる
好きな漫画を話し合うことで、親子関係が深まることも多いです。

■親御さん向け:“禁止”は逆効果です
「漫画ばっかり読んで!」
「やめなさい!」
と感情で叱ってしまうと、子どもは
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隠れて読む
-
嘘をつく
-
余計に執着する
という悪循環に陥ります。
強調したいのは次の部分。
👉 “感情で禁止する”のではなく、“仕組みをつくる”ことが大切。
おすすめのルールは以下です。
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平日は短め、休日は長め
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リビングで読む
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タイマーで時間管理
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夜遅くは読まない
-
読んだ後は一度ストレッチ
これだけで家庭のストレスは大幅に減ります。

■【Q&A】漫画にまつわる悩みに整形外科医が回答

🔸Q1:漫画を読むと姿勢が悪くなりますか?

A:読み方が悪いと姿勢が崩れます。漫画そのものは悪くありません。

🔸Q2:漫画は視力が悪くなりますか?

A:視力が急に落ちるわけではありません。近距離の連続使用で“目の筋肉が疲れる”ことが原因です。

🔸Q3:スマホと漫画、どちらが身体に悪い?

A:スマホです。画面が近く、親指だけを使うため負担が大きい。

🔸Q4:子どもに漫画は読ませても大丈夫?

A:大丈夫です。読み方のルールを決めれば健康的に楽しめます。

🔸Q5:どれくらいの時間読んでいい?

A:30〜40分で区切るのが理想です。

🔸Q6:寝転んで読むのは?

A:うつ伏せ・仰向け・横向き、すべてNGです。

🔸Q7:漫画のメリットは?

A:語彙力・想像力・読解力・ストレス軽減などプラス面も多いです。

🔸Q8:子どもが読みすぎる場合は?

A:禁止ではなく“仕組み”を作るほうが効果的です。

■まとめ:漫画は人生を豊かにする文化。正しく読めば安心。
漫画は
「姿勢が悪くなる」
「目に悪い」
と誤解されがちですが、実際には 読み方の問題 です。
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距離
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姿勢
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休憩
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場所
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時間管理
この5つを整えれば、漫画は安全に楽しめるだけでなく、
成長に役立つ素晴らしい文化になります。
整形外科医としての結論は一つ。
⭐漫画は読んでいい。楽しみましょう!!
健康的な“読み方”を身につければ、身体は壊れません。安心して楽しんでください。






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