足関節捻挫(前距腓靭帯損傷)の
リハビリについて
「痛みがなくなった=治った」ではない? 再発を防ぐために大切なことを、リハビリテーション科の理学療法士がご紹介します。

執筆:さくら通り整形外科クリニック リハビリテーション科 理学療法士 江見 翔成
監修:さくら通り整形外科クリニック 院長(整形外科専門医)
- 「段差で足をひねってしまった」
- 「スポーツ中に着地を失敗して足首を痛めた」
- 「足首の腫れは引いたけれど、なんとなく不安定な感じがする」
このような経験はありませんか?
足首の捻挫は、日常生活やスポーツの中で起こる身近なケガの一つです。そのため、「よくあるケガだから大丈夫」「少し休めば治る」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、足首の捻挫は適切な対応やリハビリを行わないと、痛みが長く残ったり、何度も同じように足首をひねったりする原因になることがあります。
足首を内側にひねることで起こる前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)の損傷は、足首の捻挫の代表的なものの一つです。
今回は、足関節捻挫、特に前距腓靭帯損傷について、次の3つに分けて、できるだけ分かりやすくご紹介します。
足関節捻挫とはどんなケガか
足関節捻挫とは?
足関節捻挫とは、簡単にいうと足首をひねることで、足首の周りにある靭帯や組織を傷めてしまった状態のことです。
靭帯とは、骨と骨をつなぎ、関節が必要以上に動きすぎないように支えている組織です。
足首には複数の靭帯がありますが、捻挫でよく問題になるのが、足首の外側にある靭帯です。その中の代表的なものの一つが、前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)です。
前距腓靭帯の位置
難しい名前ですが、「足首の外側を支えている大切な組織の一つ」と考えていただければ十分です。
どのようなときに起こるの?
足関節捻挫は、足の裏が内側を向くようにひねられたときに起こりやすいケガです。
足首を内側にひねる向き
例えば、次のように、日常生活からスポーツまで、さまざまな場面で起こります。
- 段差につまずいた
- 階段を踏み外した
- スポーツ中に相手の足の上に乗ってしまった
- ジャンプの着地に失敗した
- 走っているときにバランスを崩した
- ハイヒールなど不安定な靴を履いていた
バスケットボール、バレーボール、サッカーなど、ジャンプや急な方向転換が多いスポーツでは、足首に大きな力がかかる場面が多くあります。

足首をひねったときに起こる症状
足関節捻挫では、次のような症状がみられます。
- 足首の外側が痛い
- 足首が腫れる
- 内出血によって青紫色になる
- 歩くと痛い
- 足をつくことが怖い
- 足首を動かすと痛い
- 体重をかけると痛みが強くなる
症状の強さには個人差があります。軽く靭帯を傷めただけの場合もあれば、靭帯へのダメージが大きく、強い腫れや痛みが出る場合もあります。
また、「少し歩けるから大丈夫」と思っていても、実際には靭帯を傷めていることもあります。
こんなときは、自己判断せず早めに受診を
- 痛みが強い
- 腫れが大きい
- 体重をかけることが難しい
このような場合は、自己判断せず、医療機関に相談しましょう。

捻挫だと思っていたら骨折だった、というケースについては、足首の捻挫治療の教科書「捻挫だと思ったら骨折だった|見逃されやすい4つの骨折」で解説しています。
「捻挫だから大したことはない」と思っていませんか?
足首の捻挫で特に注意したいのは、痛みが減っただけで治療を終えてしまうことです。例えば、次のように考える方は少なくありません。
- 「歩けるようになったから大丈夫」
- 「痛みがなくなったからスポーツに復帰した」
- 「腫れが引いたからもう治ったと思う」
しかし、痛みや腫れが落ち着いたとしても、足首の動きや筋力、バランス能力が十分に回復していないことがあります。
すると、少しの段差や不安定な場所で再び足首をひねりやすくなり、「何度も同じ足首を捻挫してしまう」という悩みにつながることもあります。
そのため、足関節捻挫では、痛みを取ることだけではなく、次のことが大切になります。
- しっかり歩けるようになること
- 足首を十分に動かせるようになること
- 再びひねらないための力やバランスを取り戻すこと
足首のグラつきや力が抜ける感じが続く場合については、足首の捻挫治療の教科書「足首がグラつく・力が抜ける ― 慢性足関節不安定症」でも解説しています。
足関節捻挫の回復には段階があります
足関節捻挫のリハビリは、最初から同じ運動をするわけではありません。ケガをした直後と、痛みが落ち着いてきた時期、そしてスポーツ復帰を目指す時期では、必要なリハビリが異なります。大まかには、次のような流れで考えます。
回復の大まかな流れ
- ケガをした直後:痛みや腫れを落ち着かせる時期この時期は、無理に動かしすぎないことが大切です。痛みや腫れの状態を確認しながら、必要に応じて足首を保護します。
- 痛みが少しずつ落ち着く時期:足首の動きを取り戻す時期痛みが落ち着いてきたら、徐々に足首を動かしていきます。ずっと動かさないでいると、足首が硬くなり、歩き方にも影響が出てしまうためです。
- 回復してきた時期:筋力やバランスを取り戻す時期歩くことが楽になってきたら、次は足首を支える筋肉やバランス能力を取り戻していきます。再発を防ぐためにも大切な時期です。
02 / DAILY LIFE
生活で気をつけたいこと
足首の捻挫からの回復を助け、再発を防ぐためには、リハビリだけではなく、普段の生活でどのように過ごすかも大切です。ここでは、日常生活で気をつけたいポイントをご紹介します。
ケガをした直後は無理をしない
捻挫をした直後は、「少しくらいなら歩けるから」と無理をしてしまう方もいます。しかし、痛みが強い状態で無理に歩き続けると、足首への負担が大きくなります。
特に、次のような動作は、状態によっては避けた方がよい場合があります。
- 長時間歩く
- 階段を何度も上り下りする
- 重い荷物を持つ
- 走る
- ジャンプする
もちろん、全く動かない方がよいという意味ではありません。
大切なのは、その時の状態に合わせて負担を調整することです。
「痛みを我慢して頑張る」ことが、必ずしも早い回復につながるわけではありません。

腫れや痛みの変化を確認しましょう
足首を捻挫した後は、毎日の状態を確認することも大切です。例えば、次のような点を確認してみましょう。
- 昨日より腫れが増えていないか
- 歩いた後に痛みが強くなっていないか
- 翌日に腫れが悪化していないか
- 足をついたときの痛みが変化しているか
「今日は少し歩きすぎたかもしれない」と感じた場合は、翌日の状態も確認することが大切です。
リハビリも日常生活も、「やった直後に痛くないから大丈夫」ではなく、翌日に痛みや腫れが悪化していないかを見ることが大切です。
時間がたっても腫れが引かない場合については、足首の捻挫治療の教科書「腫れが引かない足首|時間が経った腫脹の意味」で解説しています。
靴選びも大切です
足首を痛めているときは、靴選びにも注意が必要です。かかとが不安定な靴や、サイズの合わない靴は、足首を不安定にしてしまうことがあります。できるだけ、次のような靴を選ぶことが大切です。
- 自分の足に合ったサイズ
- かかとがしっかりしている
- 歩いたときにぐらつきにくい
- 靴底が極端にすり減っていない
特に回復途中は、サンダルなど不安定な履物によって足首を再びひねってしまうこともあります。「普段から履き慣れているから大丈夫」と思っていても、ケガをしている時期は注意が必要です。

痛みがなくなっても、すぐに運動へ戻らない
スポーツをしている方にとっては、「いつから運動を再開できるか」は気になるところだと思います。痛みがなくなったからといって、すぐに以前と同じ強度の運動に戻るのは注意が必要です。
普通に歩くことができても、次のような動作では、より大きな力が足首にかかります。
- 走る
- 急に止まる
- 方向転換する
- ジャンプする
- 片足で着地する
日常生活で痛みがないことと、スポーツに必要な動きができることは同じではありません。
スポーツ復帰を目指す場合は、次のように、段階的に負荷を上げていくことが大切です。
段階的に負荷を上げていく流れ
- 歩く
- 軽く走る
- スピードを上げる
- 方向転換する
- ジャンプする
焦って復帰すると、再び捻挫してしまい、結果的に復帰までの時間が長くなってしまうこともあります。
サポーターを使えば安心?
足首のサポーターを使用することで、足首への不安を減らせる場合があります。しかし、「サポーターをしているから絶対に捻挫しない」というわけではありません。サポーターはあくまでも補助するものです。

本当に大切なのは、自分自身の足首が、次のような状態に回復していることです。
- 十分に動く
- 必要な筋力がある
- バランスを保てる
- 急な動きにも対応できる
サポーターだけに頼るのではなく、リハビリを通して足首本来の機能を取り戻していくことが大切です。
03 / REHABILITATION
足関節捻挫のリハビリ
ここからは、足関節捻挫に対するリハビリについてご紹介します。
繰り返しになりますが、リハビリは全員が同じ内容を行うわけではありません。痛みや腫れの程度、ケガをしてからの期間、日常生活やスポーツで求められる動きによって内容は変わります。ここでは一般的な流れをご紹介します。
① 痛みが強い時期のリハビリ
ケガをした直後で痛みや腫れが強い場合は、無理にストレッチをしたり、強い運動をしたりする必要はありません。
この時期の目的は、「痛みや腫れを悪化させないこと」です。
状態に合わせて足首を休ませながら、可能な範囲で少しずつ動かしていきます。この段階で大切なのは、「全く動かさない」ことと「無理をして動かすこと」の間を考えることです。
痛みが強いのに無理をする必要はありませんが、状態が落ち着いてきたら、医師・理学療法士の指導のもとで少しずつ動きを取り戻していきます。
② 足首の動きを取り戻す
痛みや腫れが落ち着いてきたら、足首の動きを少しずつ取り戻していきます。捻挫をした後は、痛みを避けるために足首を動かさなくなります。すると、足首が硬くなり、次のような症状につながることがあります。
- 「しゃがみにくい」
- 「階段を下りにくい」
- 「歩くと足首がつっぱる」
足首の動きを取り戻すためには、痛みの状態を確認しながら、次のような運動を行います。
- 足首をゆっくり上下に動かす痛みの出ない範囲で、ゆっくり動かします。
- 足首をゆっくり回す勢いをつけずに、ゆっくり回します。
- ふくらはぎをやさしく伸ばす強く伸ばしすぎないようにします。
足首の動きを取り戻す運動の例
ただし、「痛ければ痛いほど効果がある」というわけではありません。強い痛みを我慢しながら動かすのではなく、状態に合わせた範囲で行うことが大切です。
③ 歩き方を整える
足首を捻挫した後は、無意識のうちに痛い足をかばった歩き方になることがあります。例えば、次のような状態です。
- 痛い足に体重をかけない
- 足を引きずるように歩く
- 左右の歩幅が違う
このような歩き方が長く続くと、足首だけではなく、膝や股関節、腰に負担がかかることもあります。
そのため、リハビリでは足首だけを見るのではなく、正しく体重をかけられているか、スムーズに歩けているかを確認することも大切です。「痛みがなく歩ける」ことだけでなく、「できるだけ自然に歩ける」状態を目指します。
④ 足首を支える筋肉を鍛える
足首の動きがある程度戻ってきたら、次は足首を支える筋肉を鍛えていきます。足首の周りには、関節を安定させるための多くの筋肉があります。
捻挫をすると、痛みや安静期間の影響によって、これらの筋肉がうまく使えなくなることがあります。そこで、次のような運動を行い、少しずつ足首を支える力を取り戻していきます。
- つま先立ち
- ゴムバンドを使った運動
- 片足で体重を支える練習
足首を支える筋肉の運動の例
ここでも大切なのは、「重い負荷をかけること」だけではありません。正しい姿勢で、必要な筋肉をしっかり使えるようになることが大切です。
⑤ バランス能力を取り戻す
足関節捻挫のリハビリで特に大切にしたいのが、バランス能力を取り戻すことです。
私たちは普段、無意識のうちに体のバランスを取っています。例えば、少し足元が傾いたときや、段差を踏んだときでも、体は瞬間的に反応して転ばないようにしています。
しかし、足首を捻挫した後は、この「とっさにバランスを取る力」が低下することがあります。そのため、次のような練習が必要になります。
- 片足で立つ
- 不安定な場所でバランスを取る
- 体を動かしながら片足で支える
バランスの練習の例
最初は安定した床の上で片足立ちを行い、慣れてきたら少しずつ難しい動きに進んでいきます。このようなリハビリは、再び足首をひねることを防ぐためにも大切です。
⑥ スポーツ復帰に向けたリハビリ
スポーツをしている方の場合、日常生活が問題なく送れるようになった後も、さらにリハビリが必要になることがあります。スポーツでは、次のように、日常生活よりも足首に大きな負担がかかるためです。
- 急に走り出す
- 急に止まる
- 方向転換する
- ジャンプする
- 片足で着地する
そのため、スポーツ復帰前には、次のような点を確認します。
- 「走ることができるか」
- 「急に止まることができるか」
- 「方向転換しても不安がないか」
- 「ジャンプして安定して着地できるか」
ただ単純に「痛みがない」というだけではなく、スポーツに必要な動きを安全に行えることが大切です。
04 / NOT YET
「痛みがなくなった」ことと「完全に回復した」ことは違います
足関節捻挫で最も大切なポイントの一つは、次のことです。
痛みがなくなった=すべて元通りになった、とは限らない
痛みがなくても、次のような状態が残っていることがあります。
- 足首の動きが硬い
- 筋力が戻っていない
- 片足でバランスが取れない
- ジャンプや方向転換が不安
- 以前より足首をひねりやすい
この状態でスポーツや運動に復帰すると、再び同じ場所を痛める可能性があります。
だからこそ、足関節捻挫のリハビリでは、痛みを取ることだけを目標にするのではなく、「以前のように安心して動ける身体を取り戻すこと」を目指すことが大切です。
捻挫から3週間以上たっても痛みが続く場合については、足首の捻挫治療の教科書「捻挫から3週間以上たっても足首が痛い」で解説しています。
SUMMARY
まとめ
足関節捻挫、特に前距腓靭帯損傷は、日常生活やスポーツの中で起こりうる身近なケガです。比較的よくあるケガだからこそ、「少し休めば大丈夫」と考えてしまうこともあります。
しかし、適切なリハビリを行わずに痛みだけを基準に活動を再開すると、足首の不安定さが残り、何度も捻挫を繰り返してしまうことがあります。足関節捻挫からの回復では、次のような段階を踏んでいくことが大切です。
- 痛みや腫れを悪化させない
- 足首の動きを取り戻す
- 正しく歩けるようにする
- 足首を支える筋肉を鍛える
- バランス能力を取り戻す
- 必要に応じてスポーツに必要な動きを練習する
また、リハビリは「たくさんやれば早く治る」というものではありません。その時の痛みや腫れ、足首の動きに合わせて、適切な運動を選ぶことが大切です。
「痛みはないけれど何となく足首が不安定」と感じている方
このような場合、まだ十分に足首の機能が回復していない可能性もあります。足首の捻挫を「ただの捻挫」と軽く考えず、痛みがなくなった後も、しっかりと動きやバランスを取り戻すことが、再発を防ぐために大切です。
一人ひとりの状態に合わせたリハビリを行い、「痛みなく歩ける」だけではなく、「安心して動ける身体」を目指していきましょう。
お子さんの足首の捻挫については「子供の捻挫」のページもあわせてご覧ください。
この記事を書いたスタッフ
リハビリテーション科/理学療法士
江見 翔成
えみ ひなせ/岡山県倉敷市出身
日々学びの絶えない職場で働くことができていることにワクワクしています。様々なことに挑戦し、たくさん成長します。
- 資格
- 理学療法士免許
- 経歴
- 2025年 福井医療大学 卒業
足首の痛みや不安定さが続くときは
腫れが引かない、何度も足首をひねる、スポーツに戻りたい。
気になる症状があれば、ご相談ください。
福井県福井市日之出4-11-17(さくら通り沿い)/整形外科・リハビリテーション科
本記事は、足首の捻挫(足関節捻挫・前距腓靭帯損傷)について一般的な情報をお伝えするものです。症状のあらわれ方や回復の経過には個人差があり、記載の内容がすべての方に当てはまるものではありません。紹介した運動は一般的なもので、症状や回復段階によっては適さない場合があります。実際に行う際は、医師・理学療法士の指導のもとで行い、痛みを我慢しないでください。診断と治療方針は、診察のうえで個別に判断します。




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