成長期の野球肩「リトルリーガーズショルダー」を徹底解説!〜原因・生活指導・リハビリから最新ルールまで〜

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STAFF BLOG

成長期の野球肩
リトルリーガーズショルダー

日々の診療の中で、肩を痛めて来院する野球少年に出会わない日はありません。大好きな野球ができず、不安な表情を浮かべる子どもたち。そして、「投げすぎが原因でしょうか」「いつになれば復帰できますか」と心配される保護者の方。この記事では、リハビリテーション科の理学療法士の視点から、この疾患について解説します。

スポーツ障害成長期野球肩リハビリテーション
グラウンドでキャッチボールをする少年の様子(イメージ)
※ 写真はイメージです

執筆:さくら通り整形外科クリニック リハビリテーション科 理学療法士 来田 宗純

小学生から中学生の成長期にかけて発症する肩の痛み、その代表格が「リトルリーガーズショルダー(投球肩)」です。医学的には上腕骨近位骨端線離開(じょうわんこつきんいこったんせんりかい)と呼ばれます。単なる筋肉痛や成長痛ではありません。

  • 肩で何が起きているのか(疾患について)
  • 休んでいる間、どう過ごせばよいのか(生活指導)
  • 安全に復帰するために何をするのか(リハビリ)
  • 2026年から変わる球数制限のルール

01 / CONDITION

疾患について ― 肩で何が起きているのか

大人の骨と子どもの骨は、別のもの

まず、いちばん大切な前提をお伝えします。子どもの体は、大人の体をそのまま小さくしたものではありません。

成長期の子どもの骨の端には、これから背を伸ばし、骨を太く長く成長させるための骨端線(こったんせん)と呼ばれる軟骨組織があります。大人の骨が硬く締まっているのに対し、骨端線は「成長するためのやわらかいクッション」のような状態です。

関節の周りにある靭帯や筋肉よりも、この軟骨部分のほうが構造的に弱く、力学的なストレスに対してデリケートです。

子どもの肩と大人の肩の骨を左右で比較した図。子どもの側には上腕骨の上の端に骨端線が描かれている
成長期の骨の端には、骨端線と呼ばれる軟骨があります

投球動作が肩に与えるストレス

ボールを投げる動作は、体にとって非常に過酷な動きです。

腕をトップの位置まで上げてから一気に振り下ろすとき(アクセラレーション期)、肩の関節には外側へ強くねじられる力がかかります。ボールを手放した直後(フォロースルー期)には、腕の重さとスイングの遠心力によって、腕が肩から抜けようとする強い引っ張りの力が発生します。

大人であれば耐えられるこの負荷も、やわらかい軟骨のクッションが残っている子どもにとっては大きなダメージになります。腕を強く振るたびに、肩の根元で「ねじられる力」と「引っ張られる力」が同時に加わり、軟骨に小さな傷(微小外傷)が蓄積していきます。

その結果、骨端線に炎症が起き、軟骨の隙間が開いてしまうことがあります(離開)。これがリトルリーガーズショルダーです。

「肩が痛い」は結果であって、原因ではない

直接的な原因は「投げすぎ(オーバーユース)」です。しかし理学療法士の視点から見ると、それは表面的な理由にすぎません。

なぜ、その選手の肩にばかり負担が集中してしまったのか。

肩を痛める子どもの多くは、股関節や背骨(胸椎)が硬くなっています。

投球は、足で地面を蹴った力を、お尻、お腹、胸、そして最後に腕へと伝えていく「力のバケツリレー(キネティックチェーン)」です。下半身や体幹が硬いと、このリレーが途中で途切れてしまいます。すると、速いボールを投げるために、無意識のうちに腕の力だけで投げようとします。いわゆる「手投げ」です。

全身のバネを使えない手投げの状態になると、肩への負担は大きく跳ね上がります。つまり、肩が痛いのは結果であり、本当の原因は股関節や体幹の硬さ、肩甲骨の動きの悪さにあることがほとんどです。

投球動作のシルエットに、地面を蹴る力が股関節、体幹、肩甲骨を通って腕へ伝わる流れを示した図
足で地面を蹴った力を、順に腕へ伝えていきます

02 / DAILY LIFE

生活指導について ― 休むことも練習のうち

まずは「ノースロー」から

リトルリーガーズショルダーと診断された場合、もっとも重要な治療はノースロー(投球の完全中止)です。

症状が軽ければ1か月程度、骨端線の離開がはっきりしている場合は2〜3か月以上、ボールを投げることを止めていただくことになります。期間は状態によって異なりますので、診察のうえで判断します。

保護者の方・指導者の方へ大好きな野球を取り上げられる子どもにとっては、つらい期間です。「痛みが少し引いたから大丈夫だろう」と、隠れて投げてしまう子もいます。自己判断での投球再開は避けてください。
子どもへの伝え方の例 「体の成長スピードに、野球の激しい運動がついていけていない状態なんだよ」
「いまは、肩の土台をもっと強くて太いものに作り直すための、大事な工事期間なんだ」
サボりでも、ただの筋肉痛でもありません。前向きな言葉で伝えてあげてください。

LIPUS(低出力パルス超音波療法)について

骨の修復を促す機器として、LIPUS(低出力パルス超音波療法)があります。微弱な超音波の振動を患部に当てることで、骨の修復過程に働きかけるものです。

※ 効果の程度や適応は、部位・症状・年齢によって異なります。この治療が使えるかどうかは、診察のうえで判断します。

2026年からの新ルール ― 球数制限

生活指導・環境調整の一環として、指導者や保護者の方に知っておいていただきたいのが、ルールの変化です。

学童野球(小学生の軟式野球)を統括する全日本軟式野球連盟(JSBB)は、子どもたちの肩・肘を守るため、2026年シーズンから1週間あたりの投球数制限を導入しました。これまでの「1日あたり」の制限に加えて、週単位の上限が設けられた形です。

学年 1日あたり 1週間あたり
5・6年生 70球以内 210球以内
4年生以下 60球以内 180球以内

さらに2027年シーズンからは、同一試合内での「投手と捕手の兼任」が禁止されます。投手または捕手として出場した選手が、その試合の中で互いのポジションを入れ替わることはできなくなります。ただし、ほかの守備位置につくことや、一度退いたあとに元のポジションへ戻ることは認められています。

これは「特定のエース1人に頼る野球」からの転換を意味します。目先の勝利よりも、子どもの将来の健康を優先する。この流れを大人がしっかり理解し、環境を整えてあげることが、最大の予防策になります。

出典:公益財団法人 全日本軟式野球連盟「学童部における一週間に係る投球数制限の導入について(通知)」/2027年の変更点は 同連盟「2026年以降の大会運営に係る変更点について(一覧)」による。最新の運用は、所属団体の通知をご確認ください。

03 / REHABILITATION

リハビリについて ― 再発を防ぐために

ノースロー期間は、ただ治るのを待つ期間ではありません。痛みが取れても、原因となった体の硬さやフォームがそのままなら、復帰してすぐに再発します。リハビリ期間は、体をつくり直すための時間です。

理学療法士は、骨端線の回復具合を医師と確認しながら、並行して全身の機能改善を進めていきます。

最重要課題:肩の後ろ側の硬さ(GIRD)

野球肩の選手に共通して見られるのが、投げるほうの肩の後ろ側が硬くなっているという状態です。

ボールを投げ終わったあと、腕が飛んでいかないように肩の後ろの筋肉がブレーキをかけます。この疲労が蓄積すると、筋肉や関節の袋が硬く縮こまります。これをGIRD(内旋可動域制限)と呼びます。

肩の後ろが硬いと、投げる瞬間に肩の関節が正常に動かず、骨端線に負荷が集中します。改善のためのストレッチを2つご紹介します。

行う前に必ずお読みくださいここで紹介する運動は一般的なものです。痛みのある時期や、症状・回復段階によっては適さない場合があります。実際に行う際は、必ず医師・理学療法士の指導のもとで、指示された範囲で行ってください。痛みを我慢して力任せに押すことは絶対に避けてください。

① スリーパーストレッチ

  1. 横向きに寝る痛いほうの肩を下にして横向きに寝ます。頭には必ず枕を敷いて、首を楽にしてください。
  2. 腕を構える下になった腕を肩の高さで前に伸ばし、肘を90度に曲げて前腕を上に立てます(手のひらは足の方向)。
  3. ゆっくり押し下げる反対の手で、立てた手首を床の方向へゆっくり押し下げていきます。
  4. 20〜30秒キープ肩の後ろ側が「じんわり伸びて気持ちいい」と感じるところで止めます。3セットを目安に行います。
20〜30秒、じんわり伸びるところで止めます(必ず指導を受けてから行ってください)

② クロスボディストレッチ

  1. 腕を胸の前へ立ったまま、投げるほうの腕を胸の前にまっすぐ伸ばします。
  2. 肘を抱え込む反対の腕で下から肘を抱え、胸のほうへ引き寄せます。
  3. 20〜30秒キープ単に腕を引くのではなく、背中から肩甲骨が外に引き離されるような感覚を意識します。3セットを目安に行います。
立ったまま、胸の前に伸ばした腕の肘を反対の腕で抱えて引き寄せているストレッチの姿勢
20〜30秒、肩甲骨が外に引き離される感覚を意識します

全身のバケツリレーを組み直す

肩のストレッチと並行して、手投げを解消するための全身運動を行います。

01股関節の柔軟性四股踏みや股関節のストレッチで、下半身の力を骨盤へスムーズに伝える準備をします。
02胸椎の動き四つ這いで背中を丸めたり反らしたりする運動で、投球時の胸の張りを自然に作れるようにします。
03肩甲骨の安定うつ伏せで両腕を斜め前に伸ばして浮かせる運動などで、肩甲骨周りの筋肉のバランスを整えます。

ボールを投げられなくても、バッティング練習、下半身の走り込み、ゴロ捕球のステップ練習などができる場合があります。ただし、何をどこまで行ってよいかは状態によって異なります。必ず主治医や理学療法士の許可を得てから行ってください。

段階的投球復帰(RTP)プログラム

痛みが消え、検査で骨端線の修復が確認できたら、投球を再開していきます。ここで一気に全力投球をしてしまうと、つくり直した土台が再び壊れます。次のステップに沿って、階段を登るように慎重に進めます。

  1. シャドーピッチングタオルなどを使い、下半身からの力の連動が正しくできているか、フォームを確認します。
  2. ネットスロー(5m程度)ボールを指から離す感覚を取り戻します。軽く山なりで投げます。
  3. 短距離キャッチボール(10〜20m)塁間より短い距離で、力まずに投げます。
  4. 距離と強度を上げる徐々に塁間の距離へ伸ばし、力の入れ具合を50%、80%と上げていきます。
  5. マウンドからの投球平地とは違う傾斜への適応です。足をついたときの衝撃の吸収を確認します。
  6. 全力投球・試合復帰違和感がない状態を確認してから、実戦に戻ります。
投球復帰の6段階を階段状に示した図。シャドーピッチングから試合復帰まで
階段を登るように進めます。違和感があれば、一段戻ってやり直します

※ 進み方の目安は状態によって異なります。期間や各段階の判断は、診察とリハビリの中で個別にご説明します。

子どもたちには、こう伝えています 「いきなり全速力で走ると転んじゃうでしょ。ボールを投げるのも同じだよ。まずはタオルから始めて、少しずつ距離を伸ばす階段を登っていこう。もし投げていて少しでも『変だな』『痛いな』と思ったら、絶対に隠さずに教えてね。そのときは、階段を一段だけ戻ってやり直せばいいんだから。」

CLOSING

長く野球を楽しむために

リトルリーガーズショルダーは、子どもの成長期という特別な時期に、肩に大きな負担がかかることで起こるスポーツ障害です。

適切な診断を受け、理学療法士とともに「全身の硬さ」という根本原因に向き合うことで、復帰を目指していきます。回復の経過には個人差がありますので、状態を見ながら進めていきます。

2026年からの球数制限のルールも、子どもたちの未来を守るための大切なステップです。「休む勇気」を持ち、正しい体の使い方とセルフケアを身につけること。それが、大好きな野球を大人になっても長く楽しむための鍵になります。

肩の痛みに悩んでいる選手、そして保護者の皆さま。一人で悩まず、一度ご相談ください。

お子さんの肩の痛みが続くときは

投球時の痛み、投げたあとに残る痛み、肩の動かしにくさ。
気になる症状があれば、早めにご相談ください。

この記事を書いた人

理学療法士 来田宗純

来田 宗純きだ そうじゅん

さくら通り整形外科クリニック リハビリテーション科 理学療法士/福井県越前市出身

経歴:2024年 福井医療大学 卒業
資格:理学療法士免許

昨年は学びが多く、とても濃い1年でした。2年目も日々成長し続けられるよう精進します。

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本記事は、成長期の野球肩について一般的な情報をお伝えするものです。症状のあらわれ方や回復の経過には個人差があり、記載の内容がすべての方に当てはまるものではありません。紹介したストレッチや運動は一般的なもので、症状や回復段階によっては適さない場合があります。実際に行う際は、必ず医師・理学療法士の指導のもとで行ってください。診断と治療方針は、診察のうえで個別に判断します。

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