足の裏が痛い…
それ「足底腱膜炎」かもしれません
足底腱膜炎(そくていけんまくえん)の原因、生活で気をつけること、リハビリの方法を、リハビリテーション科の理学療法士が詳しく解説します。
執筆:さくら通り整形外科クリニック リハビリテーション科 理学療法士/監修:宇賀治 修平(院長・整形外科専門医)
- 「朝起きて最初の一歩が痛い」
- 「長時間座ったあと、歩き始めると踵が痛む」
- 「立ち仕事をしていると足の裏がだんだん痛くなる」
- 「ランニングをすると踵の内側が痛い」
このような症状がある場合、「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」の可能性があります。
足底腱膜炎は、ランニングなどのスポーツをしている方だけでなく、立ち仕事が多い方、歩く機会が多い方、体重が増えた方などにもみられる比較的身近な疾患です。
しかし、足の裏の痛みを我慢しながら生活を続けていると、歩き方が変わり、膝や股関節、腰など別の部位に負担がかかってしまうこともあります。
今回は、次の3つに分けて詳しく解説します。
足底腱膜炎とは
足底腱膜とは?
足底腱膜とは、踵の骨から足の指の付け根に向かって扇状に広がっている、強い線維性の組織です。
足の裏には「土踏まず」がありますが、この土踏まずの形を保つために重要な役割を担っているのが足底腱膜です。
私たちが立ったり歩いたりするときには、足に体重がかかります。その際、足底腱膜は足のアーチ構造を支えながら、地面から受ける衝撃を吸収しています。
また、歩行時に足の指が反ることで足底腱膜が引っ張られ、足のアーチが高くなります。これによって足全体が安定し、地面をしっかり蹴り出すことができます。
つまり足底腱膜は、次のような重要な働きをしています。
足底腱膜炎はなぜ起こる?
足底腱膜炎は、足底腱膜に繰り返し負担がかかることで発症します。
特に負担が集中しやすいのが、踵の骨と足底腱膜がつながっている部分です。歩いたり走ったりするたびに、この部分には引っ張られる力が加わります。
多少の負担であれば体が修復してくれますが、「負担がかかる量」と「体が回復する量」のバランスが崩れると、足底腱膜に微細な損傷が生じ、痛みにつながります。
バランスが崩れると、微細な損傷が生じ、痛みにつながります
以前は「炎症」が主な原因と考えられていましたが、長期間続いている足底腱膜炎では、単純な炎症だけではなく、足底腱膜の変性が関係しているケースもあります。
そのため、痛み止めや湿布だけでなく、足にかかっている負担そのものを見直すことが重要になります。
足底腱膜炎になりやすい人
足底腱膜炎は、次のような方に起こりやすいとされています。
足のアーチについて重要なのは、単純に「扁平足だから悪い」と考えるのではなく、「歩いたときに足がどのように動いているか」を見ることです。
足底腱膜炎の代表的な症状
足底腱膜炎で非常に特徴的なのが、「朝起きて最初の一歩が痛い」という症状です。
寝ている間は足底腱膜に大きな負荷がかかっていません。起床して急に体重をかけることで足底腱膜が引き伸ばされ、強い痛みを感じることがあります。
同じように、次のようなときにも痛みが出やすくなります。
- 長時間座ったあとの歩き始め
- 車から降りた直後
- 休憩したあとの歩き始め
その後、少し歩いているうちに痛みが軽くなる方もいます。しかし症状が進むと、次のような状態になることもあります。
- 「歩いている間ずっと痛い」
- 「夕方になるほど痛い」
- 「仕事中に立っていられない」
- 「運動できない」
痛みが出やすい場所は、踵の真ん中というよりも、踵のやや内側から土踏まずにかけてです。
02 / DAILY LIFE
日常生活で気をつけたいこと
足底腱膜炎を改善するためには、リハビリだけではなく日常生活の見直しが非常に重要です。
治療をしていても、毎日足底腱膜に過剰な負担をかけ続けていれば、なかなか改善しません。ここからは、生活の中で注意したいポイントを紹介します。
① 「痛いけれど我慢して歩く」は避ける
足底腱膜炎では、「歩いた方が治るのでは?」と考えて痛みを我慢しながらウォーキングを続けてしまう方がいます。
しかし、痛みが強く出るほどの運動を繰り返すことはおすすめできません。一方で、完全に動かさないことも筋力低下につながります。
大切なのは、「痛みを悪化させない範囲で活動する」ことです。
例えば、次のような負荷の調整を行います。
- 30分歩くと強く痛むのであれば15分にする
- 毎日ランニングしていたのであれば一時的に休む
- ジャンプ運動を自転車や水中運動に変更する
② 朝起きてすぐに勢いよく歩かない
足底腱膜炎の方は起床後の一歩目に強く痛むことがあります。そのため、ベッドから起き上がる前に、次のような動きを行ってから立ち上がると、痛みを軽減できることがあります。
- 足首をゆっくり上下に動かす
- 足の指を曲げ伸ばしする
- 足首を回す
- ふくらはぎを軽く伸ばす
いきなり足に全体重をかけるよりも、足を少し動かしてから歩き始めることがポイントです。
③ 靴を見直す
足底腱膜炎では靴選びも重要です。踵が潰れている靴やクッション性が低下した靴を長期間使っていると、足への衝撃が大きくなることがあります。
特にランニングシューズでは、見た目がきれいでも靴底のクッション性が低下している場合があります。また、次のような靴も注意が必要です。
- 底が極端に薄い靴
- サイズが合っていない靴
- 踵が安定しない靴
- すり減りが大きい靴
足に合ったサイズで、踵周囲がある程度安定し、適度なクッション性がある靴を選びましょう。必要に応じてインソールを使用することもあります。
④ 裸足で硬い床を歩きすぎない
足底腱膜炎の症状が強い時期には、フローリングなど硬い床を裸足で歩くと痛みが増すことがあります。特に朝起きた直後などは注意が必要です。
自宅内でもクッション性のある履物を利用すると、足への負担を軽減できることがあります。
⑤ 運動量を急激に増やさない
足底腱膜炎は、次のようなケースでも起こります。
- 「今まで5kmしか走っていなかったのに、急に10km走った」
- 「健康のために毎日1万歩を始めた」
- 「マラソン大会前なので急に走り込みを増やした」
筋肉や腱、足底腱膜などの組織は、負荷に適応するまで時間が必要です。運動をするときには、体が慣れる時間を確保しながら少しずつ負荷を増やしましょう。
⑥ 長時間の立ち仕事では休憩を入れる
仕事の都合で立ち続けなければならない方も多いと思います。その場合には、可能であれば数分でも座る時間を作ることが大切です。また、次のような工夫も有効です。
- 左右どちらか一方の足に体重をかけ続けない
- 同じ姿勢を長時間続けない
- 足首を軽く動かす
⑦ 体重管理も大切
体重が増えるほど、歩行時に足へかかる負荷は大きくなります。特に短期間に体重が増加した場合には、足がその負担に適応できず痛みが出ることがあります。
無理な減量を行う必要はありませんが、食事や運動習慣を見直し、適正体重を維持することも足への負担軽減につながります。
03 / REHABILITATION
足底腱膜炎のリハビリ
足底腱膜炎のリハビリでは、「痛い場所だけをマッサージする」という治療だけでは十分ではないことがあります。
なぜなら、足底腱膜に負担がかかる原因が、次のようにさまざまな場所に隠れていることがあるからです。
- 足首
- ふくらはぎ
- 足の指
- 足部の筋力
- 股関節
- 歩き方
そのため、リハビリでは足全体の動きや歩き方を評価し、その方に合った治療を行います。
① ふくらはぎのストレッチ
足底腱膜炎のリハビリで非常に重要なのが、ふくらはぎの柔軟性です。ふくらはぎが硬くなると足首を上に曲げにくくなり、歩行時に足部へ負担がかかりやすくなります。
代表的な方法が、壁を使ったストレッチです。
- 壁に両手をつく壁に両手をつきます。
- 片足を後ろに引く伸ばしたい側の足を後ろに引きます。
- 前方へ体重を移動する後ろ足の踵を床につけたまま、前方へ体重を移動します。
- 20〜30秒程度保持するふくらはぎが伸びているところで20〜30秒程度保持します。
- 2〜3回行うこれを2〜3回行います。
膝を伸ばした状態では主に腓腹筋が伸びます。さらに後ろ側の膝を少し曲げて同じように行うことで、ヒラメ筋のストレッチになります。
痛みを我慢して強く伸ばす必要はありません。気持ちよく伸びている程度に行いましょう。
② 足底腱膜のストレッチ
足底腱膜そのものをストレッチする方法もあります。
- 足を反対側の膝の上に乗せる椅子に座り、痛い方の足を反対側の膝の上に乗せます。
- 足の指をゆっくり反らせる足の指を手で持ち、ゆっくり反らせます。
- 伸びている感覚を確かめる土踏まずから踵にかけて伸びている感覚があれば十分です。
特に朝起きて歩く前や、長時間座ったあとに行うと有効なことがあります。
ただし、強く引っ張りすぎると痛みが悪化する場合があります。「少し伸びている」と感じる程度に行いましょう。
③ 足の指を鍛える
足部には多数の小さな筋肉があります。これらの筋肉は足のアーチを支え、立位や歩行を安定させる働きがあります。
代表的なトレーニングとして、タオルギャザーがあります。
- 床にタオルを敷く床にタオルを敷きます。
- 足の指でたぐり寄せる足の指を使って、タオルを手前にたぐり寄せます。
ただし、足底腱膜炎ではタオルギャザーだけを繰り返せばよいわけではありません。足の指を過剰に丸める動きが強い方もいるため、その人の足の使い方によっては別の運動を選択する必要があります。
④ 「ショートフット」で足のアーチを鍛える
ショートフットエクササイズは、足の指を強く曲げずに土踏まずを持ち上げる練習です。
- 踵と親指の付け根を床につける踵と足の親指の付け根を床につけた状態にします。
- 土踏まずを軽く持ち上げる足の前側を踵に近づけるようなイメージで、土踏まずを軽く持ち上げます。
- 座った状態から始める最初は座った状態で練習し、慣れてきたら立った状態で行います。
ポイントは、「足の指をギュッと丸めない」ことです。
足のアーチを支える筋肉を使えるようになることで、歩行時の足底腱膜への負担軽減につながります。
⑤ 踵上げ運動
ふくらはぎの筋肉を鍛えることも重要です。代表的なのがカーフレイズと呼ばれる踵上げ運動です。
- つかまって立つ壁や椅子などにつかまりながら立ちます。
- ゆっくり踵を持ち上げるゆっくり踵を持ち上げます。
- ゆっくり踵を下ろすその後、ゆっくり踵を下ろします。
- 両足から始める最初は両足で行い、症状が改善してきたら片脚でも行います。
ただし、踵上げをしたときに足底に強い痛みが出る場合には、負荷が高すぎる可能性があります。回数を減らしたり、両足で行ったりして調整しましょう。
⑥ 股関節・お尻の筋肉も鍛える
足底腱膜炎なのに、「なぜお尻の筋肉を鍛えるの?」と思われるかもしれません。しかし、歩行やランニングでは、足だけでなく股関節や骨盤の動きも重要です。
例えば、お尻の筋肉が弱いと歩くときに膝が内側に入り、その影響が足部まで伝わることがあります。結果として足のアーチが崩れ、足底腱膜への負担が増えることがあります。
リハビリでは、次のような運動を行うことがあります。
- 片脚立ち
- スクワット
- ヒップリフト
- 横向きでの股関節トレーニング
足の裏が痛いからといって、足の裏だけを治療するとは限らないのです。
⑦ 歩き方を確認する
足底腱膜炎では歩行評価も非常に重要です。例えば、次のように、その人ごとの特徴があります。
- 足が外側を向いている
- 必要以上に足が内側へ倒れている
- 踵から強く接地している
- 歩幅が大きすぎる
- 片側に体重が偏っている
- 足の指がうまく使えていない
こうした歩き方の癖を確認し、必要に応じて修正します。
単純に「正しい歩き方」を全員に当てはめるのではなく、その人の筋力や柔軟性、仕事内容、運動習慣などを踏まえて調整することが大切です。
⑧ インソールを使用することもあります
足部のアーチや歩行状態によっては、インソールを使用することで足底腱膜への負担を軽減できる場合があります。特に立ち仕事や歩行時間が長い方にとっては、日常生活の中で負担を調整できる点がメリットです。
ただし、「扁平足だからとりあえずアーチを高くすればよい」というわけではありません。足の形や動きに合わないインソールを使用すると、かえって痛みが強くなることもあります。
必要に応じて医師や理学療法士などに相談し、自分の足に合ったものを検討しましょう。
04 / WHOLE BODY
リハビリは「痛い場所」だけを見るものではありません
足底腱膜炎では、痛みがあるのは足の裏ですが、原因は一つではありません。例えば、次のようなケースがあります。
CASE 1ふくらはぎの硬さから始まる例
- ふくらはぎが硬い
- 足首が十分動かない
- 歩くときに足が過剰に内側へ倒れる
- 足底腱膜に強い牽引力が加わる
- 踵が痛くなる
CASE 2股関節の筋力から始まる例
- 股関節の筋力が弱い
- 片脚で支えたときに膝が内側へ入る
- 足部のアーチが崩れる
- 足底腱膜への負担が増える
※ 負担が伝わっていく流れの例です。原因や経過は一人ひとり異なります。
そのため、「足の裏をマッサージしているけれど、なかなか治らない」という方は、足底以外の部分に原因がないかを確認することが重要です。
05 / STEP BY STEP
足底腱膜炎は焦らず改善していくことが大切です
足底腱膜炎は、一度発症すると数週間から数か月症状が続くことがあります。
特に、次のようなことで再び症状が悪化するケースも少なくありません。
- 「少しよくなったからランニングを再開した」
- 「痛みが減ったので急に歩く距離を戻した」
痛みが減ったことと、足が負荷に耐えられるようになったことは同じではありません。
症状が改善してきたら、次のように、少しずつ負荷を上げていくことが重要です。
少しずつ負荷を上げていく流れ
- 歩行
- 長時間歩行
- 軽いジョギング
- ランニング
- 競技復帰
SUMMARY
まとめ
足底腱膜炎は、踵から足の裏にかけて痛みが出る代表的な疾患です。特に、次のような症状は特徴的です。
- 「朝起きたときの一歩目が痛い」
- 「しばらく座ったあとに歩くと痛い」
- 「長時間立っていると踵が痛い」
足底腱膜炎を改善するためには、単に痛い場所を治療するだけではなく、次のような複数の視点から考えることが重要です。
- 歩く量を調整する
- 靴を見直す
- ふくらはぎの柔軟性を改善する
- 足の筋力をつける
- 股関節や下肢全体を鍛える
- 歩き方を改善する
特に、足底腱膜炎は一人ひとり原因が異なります。「扁平足だから」「歩きすぎたから」という一つの原因だけで決めつけるのではなく、足首の硬さ、筋力、立ち方、歩き方、仕事内容、スポーツ習慣などを総合的に確認することが大切です。
「ストレッチをしているけれど改善しない」
「ランニングを再開するとすぐ痛くなる」
「仕事中に足が痛くて困っている」
適切な診断を行ったうえで、一人ひとりに合わせたリハビリを行うことが、痛みを改善し、再発を防ぐための重要なポイントです。
ランニングで起こりやすいケガについては、スタッフブログ「マラソンで起こりやすいケガや痛み」でも紹介しています。
足の裏・踵の痛みが続くときは
朝の一歩目の痛み、歩き始めの痛み、立ち仕事や運動での痛み。
気になる症状があれば、ご相談ください。
福井県福井市日之出4-11-17(さくら通り沿い)/整形外科・リハビリテーション科
本記事は、足底腱膜炎について一般的な情報をお伝えするものです。症状のあらわれ方や回復の経過には個人差があり、記載の内容がすべての方に当てはまるものではありません。紹介したストレッチや運動は一般的なもので、症状や回復段階によっては適さない場合があります。実際に行う際は、医師・理学療法士の指導のもとで行い、痛みを我慢しないでください。診断と治療方針は、診察のうえで個別に判断します。




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