足首の捻挫の腫れと動注療法|モヤモヤ血管に着目した治療の考え方

「捻挫の腫れと動注療法 わかっていること・いないこと」と書かれた、駅の階段の下で足首を気にする男性の写真入りのアイキャッチ YouTube

キーワード動注療法足関節捻挫自由診療

こんにちは。福井市のさくら通り整形外科クリニック、院長の宇賀治修平です。

「動注療法という治療を聞いたけれど、捻挫の腫れにも使えるの?」

「モヤモヤ血管って、足首にもあるの?」

足首の捻挫のあと、腫れや痛みが長引いている方から、このようなご質問をいただくことがあります。

このページでは、動注療法がどのような治療なのかをあらためて整理し、そのうえで「足首の捻挫の腫れに対して、いまどこまでいえるのか」をお話しします。期待できることだけでなく、まだわかっていないこと、費用やリスクもあわせてお伝えします。

オフィスビルの階段の踊り場で、手すりに手を添えて足首を気にしている40代の女性(イメージ)
※ 写真はイメージです

この記事でわかること

  • 動注療法とはどのような治療か、塞栓術とは何が違うのか
  • 捻挫の腫れについて、研究からいえること・まだいえないこと
  • 検討の余地がある場合と、先に優先すること
  • 当院での流れ、費用、主なリスク、未承認医薬品について

動注療法を考える前に、腫れの原因を確かめます

足首をひねると、関節を支える靱帯(じんたい)や周りの組織が傷つき、炎症や出血によって腫れが出ます。まず大切なのは、損傷の程度に合わせて足首を保護し、必要な固定やリハビリテーションを行うことです。腫れだけを抑えれば治療が終わるわけではありません。

「レントゲンで骨折がなかったから大丈夫」と思っていても、靱帯だけでなく、軟骨や腱などに損傷が隠れている場合があります。腫れが続くときは、診察に加えて、必要に応じて超音波検査やMRIで原因を調べます。

治療を選ぶ前に「どこが傷んでいるのか」「何が症状を長引かせているのか」を確かめることが、動注療法を含めたあらゆる治療を考える出発点です。

腫れが引かないときに考えられる原因は、腫れが引かない足首|時間が経った腫脹の意味(足首の捻挫治療の教科書)でくわしくご説明しています。

腫れが引かないときに考えられる原因や、その確かめ方は、足首の捻挫で腫れが引かない方へ|原因の確かめ方と、動注療法という選択肢(足首の捻挫治療の教科書)でくわしく解説しています。

動注療法とは、どのような治療か

動注療法(どうちゅうりょうほう)は、動脈から薬剤を注入し、炎症に関わる異常な細い血管、いわゆる「モヤモヤ血管」に働きかけることを目指す治療です。

長引く痛みのある部位では、正常な血管とは異なる細く不規則な血管が、炎症とともに増えていることが報告されています。この血管が神経とともに増えることで、痛みが続きやすくなると考えられています。動注療法は、こうした血管に薬剤を作用させることで、症状の改善を図る治療です。

正常な血管とモヤモヤ血管の比較イメージ図
正常な血管と、痛みのある部位で増えるモヤモヤ血管(イメージ図)

当院での動注療法の進め方

  1. 診察・超音波検査患部の状態を診察し、超音波(エコー)検査で、異常な血管による血流の信号があるかを確かめます。
  2. 処置ベッドに横になり、動脈に細いチューブ(カテーテル)を入れて薬剤を注入します。所要時間は5〜10分ほどです。手指の場合は手首の動脈から行います。足の症状の場合の方法は、診察の際にご説明します。
  3. 止血・安静注射した部位を圧迫して止血し、しばらく安静にして問題がないことを確かめます。
  4. 帰宅日帰りの治療で、傷は針の穴だけです。当日の入浴や水仕事もできます。
エコーを見ながら手首の動脈から薬液を注入する動注療法の施術
当院での動注療法の様子(手首の動脈から行う場合)

治療の流れや対象の例は、当院の動注療法のページにもまとめています。

院長の解説動画

動注療法とはどんな治療か(指の痛みの例)

動注療法がどんな治療かを、指の痛み(ヘバーデン結節)の例で院長が解説しています。足首の捻挫についての動画ではありません。効果の感じ方には個人差があります。

動注療法と塞栓術は、同じ治療ではありません

モヤモヤ血管に着目した治療には、動注療法のほかに、カテーテルを血管の中で進めて目的の血管を選び、そこに薬剤を入れる「塞栓術(そくせんじゅつ)」という方法もあります。どちらも血管に着目した治療ですが、手技も、薬剤の届き方も異なります。

  動注療法 塞栓術
薬剤を入れる位置 動脈にチューブを入れた位置から注入する カテーテルを進め、目的の血管を選んで注入する
薬剤の届き方 血液の流れにのって、その先の血管へ届く 選んだ血管に、より限られた範囲で届く

このページでご説明しているのは、当院で行っている動注療法です。

研究結果を読むときの注意「モヤモヤ血管の治療で改善した」という報告を見かけたときは、それが動注療法なのか塞栓術なのかを確かめることが大切です。手技が違えば、結果をそのまま当てはめることはできません。同じ治療としてひとくくりにしないようにしましょう。

捻挫の腫れについて、研究からいえること・まだいえないこと

外傷や手術のあとに続く慢性的な痛みに対して、血管塞栓術のあとに痛みや画像上の炎症所見が改善したことを報告した研究があります。(参考文献1)

ただし、これは患者さん6人を対象とした小規模な報告です。また、足関節の症例には追加の治療も行われており、改善のすべてを塞栓術の効果と判断することはできません。さらに、この研究は塞栓術についての報告で、動注療法そのものを調べたものではありません。

クリニックの相談スペースで、資料を前にスタッフの説明を聞く40代の男性(イメージ)
※ 写真はイメージです

この結果から、次のようなことまではいえません。

  • 捻挫した直後の腫れが、動注療法ですぐに引く
  • 靱帯が早く治る
  • 早くスポーツや競技に復帰できる
長引く炎症性の症状に対して検討する余地はありますが、足関節捻挫の腫れへの効果や適切な時期は、さらに検証が必要です。

参考文献

いずれも、動脈を塞ぐ塞栓術(TAE)などを調べた報告です。当院で行う動注療法とは手技が異なり、足関節捻挫の腫れを対象とした研究ではありません。治療の適否は、診察で医師が判断します。

  1. Huang ZR, Chen PY, Chiu NY, ほか. Transarterial Embolization for Chronic Postsurgical or Posttraumatic Pain of Musculoskeletal Origin: Clinical Outcomes and Imaging Correlates. Life (Basel). 2025;15(8):1208. PubMed
    外傷や手術のあとに続く慢性的な痛みの6人に、塞栓術(TAE)を行った後ろ向きの報告。本文で紹介した研究
  2. Okuno Y, Matsumura N, Oguro S. Transcatheter arterial embolization using imipenem/cilastatin sodium for tendinopathy and enthesopathy refractory to nonsurgical management. J Vasc Interv Radiol. 2013;24(6):787-92. PubMed
    保存療法で改善しない腱・腱付着部の痛みに対する、同じ薬剤(イミペネム・シラスタチン)を使った動脈内治療の初期の報告
  3. Gandhi R, Banker M. Early outcomes of transcatheter arterial embolization using imipenem/cilastatin for plantar fasciitis refractory to conservative therapy. Br J Radiol. 2024;97(1155):544-548. PubMed
    足底腱膜炎の10人に対する報告。著者自身が、効果を確かめるにはきちんと計画された比較試験が必要としている
  4. Kishore S, Sheira D, Malin ML, ほか. Transarterial Embolization for the Treatment of Chronic Musculoskeletal Pain: A Systematic Review of Indications, Safety, and Efficacy. ACR Open Rheumatol. 2022;4(3):209-217. PubMed
    運動器の慢性的な痛みに対する塞栓術の研究をまとめた系統的レビュー

検討の余地がある場合と、先に優先すること

研究の段階をふまえると、足首の捻挫で動注療法を考えるのは「基本の治療を行っても、炎症による腫れや痛みが長引いている場合」に、選択肢のひとつとしてご相談いただく、という位置づけになります。

先に優先すること

  • ひねったばかりの時期は、まず損傷の程度を確かめ、足首の保護・固定を行います
  • 骨折や靱帯の大きな損傷、足首の不安定さがある場合は、その治療を優先します
  • 腫れの原因がまだ確かめられていない場合は、診察と画像検査が先です
  • 固定やリハビリテーションなど、基本の治療をまだ始めていない場合は、そちらから行います

ご相談いただきたい場合

  • 原因を確かめ、基本の治療を続けていても、腫れや痛みが長引いている
  • 動注療法について、効果の根拠やリスクを聞いたうえで考えたい
足首の捻挫も対象になります足首の捻挫のあと腫れや痛みが長引いている場合も、動注療法の対象になります。ただし、実際に治療を行うかどうかは、症状の原因、これまでの治療の経過、超音波検査の所見などをもとに、医師が診察で判断します。検査の結果によっては、動注療法をおすすめしない場合もあります。
院長が患者に治療の流れを説明している診察の様子
治療の流れやリスクは、診察の際に医師がご説明します

受ける前に知っておいていただきたいこと

動注療法には、次のようなリスク・副作用があります。治療の効果にも個人差があります。

  • 注射した部位の内出血・皮下出血
  • 薬剤へのアレルギー反応
  • 一時的な痛みの増強や、指先などの色の変化
  • まれに、血管の損傷・感染・血流障害
  • 効果には個人差があり、改善しない場合や痛みが残る場合があります

抗菌薬などのお薬でアレルギーを起こしたことがある方は、必ず事前にお伝えください。

また、腫れや痛みが軽くなっても、靱帯の修復や足首の安定性が十分に回復したとは限りません。再びひねることを防ぐには、足首の動く範囲、筋力、バランス能力を取り戻すリハビリテーションが大切です。

リハビリテーション室で、理学療法士に見守られながら片脚立ちのバランス練習をする30代の男性(イメージ)
※ 写真はイメージです

当院の理学療法士による足関節捻挫のリハビリについての記事もあわせてご覧ください。

ご自身が対象になるかどうかは、診察と検査で確かめます

動注療法を受けるかどうかを決める前の段階でも、ご相談いただけます。
ご予約の際に「動注療法の相談」とお伝えください。

お電話でのご予約は 0776-58-7138

費用と、自由診療についてのご説明

動注療法は自由診療(保険適用外)です。費用は次のとおりです(すべて税込)。

片側・1回目 33,000円
片側・2回目以降 22,000円
両側・1回目 66,000円
両側・2回目以降 44,000円

※ 上記のほかに、初診料・再診料、超音波検査などの診察費用が別途かかる場合があります。
※ 同じ日に保険診療と併用することはできません。
※ 自由診療でも、医療費控除の対象となる場合があります。

クリニックの受付カウンターで、スタッフから説明を聞く50代の女性(イメージ)
※ 写真はイメージです
使用する医薬品(未承認医薬品)
注射用抗菌薬「Imigem 500mg/500mg」(有効成分:イミペネム水和物・シラスタチンナトリウム/製造:Intas Pharmaceuticals Ltd./製造国:インド)を使用します。日本国内では薬事承認を受けていない未承認医薬品です。
入手経路
本治療法の提供元であるオクノクリニックの紹介により、株式会社MedPlusが取り扱う製品を、医師の責任のもとで輸入して使用しています。
国内で承認された同じ成分の医薬品
同じ有効成分を含む「チエナム点滴静注用0.5g」が国内で承認されていますが、承認された効能・効果に動注療法は含まれていません。
諸外国での安全性などの情報
本剤はインドで抗菌薬として販売されています。有効成分のイミペネム・シラスタチンは、日本を含む各国で抗菌薬として承認・使用されており、主な副作用として、ショック・アナフィラキシー、けいれん、肝機能障害、下痢、腎機能障害などが報告されています。動注療法としての使用は、日本を含むいずれの国でも承認されたものではありません。
医薬品副作用被害救済制度
未承認医薬品を使用するため、健康被害が生じた場合でも、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による医薬品副作用被害救済制度の対象外です。
お問い合わせ
医療法人Eternabloom さくら通り整形外科クリニック(福井県福井市日之出4-11-17/0776-58-7138)

よくあるご質問

患者さん

患者さん足首をひねったばかりですが、すぐに動注療法を受けられますか?

院長

院長ひねった直後の腫れが動注療法ですぐに引く、とはいえません。まずは損傷の程度を確かめ、保護や固定、リハビリテーションといった基本の治療を行います。

患者さん

患者さん健康保険は使えますか?

院長

院長動注療法は自由診療のため、健康保険は使えません。同じ日に保険診療と併用することもできません。医療費控除の対象となる場合があります。

患者さん

患者さん1回で終わりますか?

院長

院長効果の感じ方や必要な回数には個人差があり、改善しない場合もあります。治療を受けるかどうかも含めて、診察のうえでご説明します。

期待だけで選ばず、根拠とリスクを確かめて

足首の捻挫は、腫れや痛みだけでなく、その後の歩行やスポーツへの復帰まで見据えて治療することが大切です。

動注療法についても、期待だけで選ぶのではなく、症状の原因、これまでの治療、効果の根拠とリスクを確かめたうえで判断しましょう。「捻挫だから仕方がない」と我慢せず、腫れや痛みが続く場合は整形外科にご相談ください。

晴れた日の川沿いの遊歩道を、前を向いてウォーキングする40代の女性(イメージ)
※ 写真はイメージです

捻挫のあとの腫れや痛みが続いている方へ

まずは原因を確かめるところから。動注療法についてのご質問も、診察の際にお気軽にどうぞ。

この記事を執筆した人
宇賀治 修平
  • 医学博士
  • 日本整形外科学会整形外科専門医
  • 日本足の外科学会認定医
  • 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
  • 日本骨粗鬆症学会認定医
  • 日本整形外科学会認定リハビリテーション医