変形性膝関節症の治療は何から始めるのか|運動療法・薬・注射・ラジオ波・手術の順番

桜の咲くゆるやかな石段の小道を、女性がゆっくり歩いている後ろ姿のイラスト アキュリアン
保険診療変形性膝関節症治療の順番

「湿布と痛み止めだけで、このまま様子を見ていていいのだろうか」

「注射はいつまで続けるものなのか、よくわからない」

「いつか手術と言われるのではないかと、不安になる」

変形性膝関節症(ひざの軟骨がすり減り、痛みや腫れが出る病気)の治療には、いくつもの選択肢があります。選択肢が多いぶん、「自分は今どこにいて、次に何があるのか」が見えにくくなりがちです。

このページでは、ひざの治療を何から始めて、どのような順番で次を考えていくのかを整理します。どの治療が優れているかという話ではなく、それぞれの治療がどこに位置づけられるのかを知っていただくためのページです。

クリニックの相談スペースで、女性の患者さんがひざに手を添えながら看護師と穏やかに話している様子(イメージ)
※ 写真はイメージです

この記事でわかること

  • ひざの治療は、何から始めるのが基本なのか
  • 運動療法・薬・注射・ラジオ波治療・手術の位置づけ
  • 今の治療から「次」を考える目安
  • ひざのラジオ波治療について、あわせて読みたい記事

治療は体への負担が小さいものから

変形性膝関節症の治療は、一般的に、体への負担が小さい治療から始め、効果を見ながら次を検討するという考え方で進めます。当院で整理している順番の目安は、次のとおりです。

  1. 1運動療法と生活の工夫ひざを支える筋力をつけ、ひざへの負担を減らす。すべての治療の土台です
  2. 2薬(飲み薬・湿布・塗り薬)痛みや炎症をやわらげ、運動療法を続けやすくします
  3. 3関節内注射(ヒアルロン酸など)ひざ関節の中に薬を入れ、動きや炎症に働きかけます
  4. 4ひざのラジオ波治療保険・条件あり保存療法(手術をしない治療)を続けても痛みが十分に取れない場合の選択肢です
  5. 5手術骨切り術・人工膝関節置換術など。当院では行わず、連携する医療機関にご紹介します
左下から右上へ上がる5段の階段の図。下から運動療法、薬、注射、ラジオ波治療、手術の順に並び、運動療法の土台が全体を支えている
治療の順番の目安(模式図)。運動療法はすべての段階の土台として続けます。順番どおりに1つずつ進むとは限りません
順番は「目安」です必ずしも1から順に1つずつ進むわけではありません。運動療法と薬を同時に始めることもあれば、ひざの状態や生活の事情によって、早めに次の治療を検討することもあります。どう組み合わせるかは、診察と画像検査の結果をもとにご相談して決めます。

土台になるのは運動療法

どの治療を選ぶ場合でも、土台になるのは運動療法(リハビリテーション)です。ひざを支える筋肉、とくに太ももの前の筋肉が弱ると、ひざは不安定になり、痛みが出やすくなります。

リハビリ室で、女性の患者さんがベッドに腰かけてひざを伸ばす運動をし、理学療法士がそばで支えている様子(イメージ)
※ 写真はイメージです
  • 理学療法士と一緒に、ひざを支える筋肉をきたえる
  • ひざの曲げ伸ばしなど、動く範囲を保つ
  • 体重を管理し、ひざへの負担を減らす
  • 靴やインソール、杖などで、歩くときの負担を分散する

運動療法は、薬や注射、ラジオ波治療と並行して続けるものです。痛みがやわらいだ時期は、筋力を取り戻しやすいタイミングでもあります。当院では、理学療法士によるリハビリテーションを院内で受けていただけます。

薬で痛みをやわらげる

痛みや炎症をやわらげる目的で、飲み薬(痛み止め)、湿布、塗り薬を使います。痛みが強いままでは運動療法も続けにくいため、薬は「動けるようにするための手段」と考えるとわかりやすいかもしれません。

お薬についての注意痛み止めの飲み薬は、長く飲み続けると胃腸や腎臓などに負担がかかることがあります。ほかの病気で飲んでいるお薬との組み合わせにも注意が必要です。お薬手帳をお持ちいただき、自己判断で量を増やしたり、飲み方を変えたりしないでください。

関節内注射を組み合わせる

薬と運動療法で痛みが残る場合、ひざ関節の中に直接薬を入れる注射を組み合わせます。

ヒアルロン酸注射

関節の動きをなめらかにし、炎症をやわらげる方向に働きます。保険診療で、間隔をあけて繰り返し受けることができます。

ステロイド注射

炎症や腫れが強い時期に、炎症を抑える目的で使うことがあります。関節の組織への影響に配慮し、回数や間隔を考えながら使います。

「注射の効きが以前より悪くなってきた」と感じている方は、ヒアルロン酸注射が効かなくなってきたひざへもあわせてご覧ください。

次の選択肢としてのラジオ波治療

運動療法・薬・注射を続けても痛みが十分に取れない場合に、次の選択肢として検討するのが、ひざのラジオ波治療(末梢神経ラジオ波焼灼療法)です。当院では「アキュリアン」という機器を使って行います。

ひざの周りで痛みを伝えている神経に、超音波で位置を確かめながら細い針を近づけ、高周波の熱を加えて、痛みの信号を伝わりにくくする治療です。関節の外から、痛みの伝わり方に働きかける点が、関節の中に働きかける注射との違いです。

2023年6月から保険診療で受けられるようになりました(条件があります)。

主な条件は、変形性膝関節症による慢性的な痛みがあること、手術の対象とならないか手術を選ばない事情があること、そして保存療法をすでに受けていて、それでも痛みが十分に取れていないことです。つまり、1〜3の治療を続けてきたことが前提になります。詳しくは保険適用になる条件の記事をご覧ください。

この治療でできないこと次の点をご理解いただいたうえで検討する治療です。
  • 痛みがゼロになる治療ではありません
  • 効果には個人差があり、十分な効果が得られない場合もあります
  • 神経は時間とともに回復するため、痛みが再び出てくることがあります
  • すり減った軟骨が元に戻る治療ではありません
  • 針を刺す処置のため、内出血・しびれ・感染などのリスクがあります

リスクについては、診察の際に詳しくご説明します。

費用の目安

1割負担の方約15,000円
3割負担の方約45,000円

※ 別途、初診料・再診料・画像検査の費用などがかかります。
※ 高額療養費制度の対象になる場合があります。詳しくは窓口でおたずねください。
※ ひざのラジオ波治療は保険診療のみで行っています。

手術を考えるとき

変形が進み、保存療法やラジオ波治療では日常生活の痛みが十分に抑えられない場合には、骨切り術や人工膝関節置換術などの手術が検討されます。

手術を勧められたものの、決心がつかない方に向けた記事もあります:人工関節の手術を勧められたが、決心がつかない方へ

当院の体制当院では手術は行っておりません。手術が必要と判断した場合は、連携する医療機関にご紹介します。紹介先で手術を受けたあとのリハビリテーションは、当院で継続していただけます。

次の治療を考える目安

今の治療を続けていて、次のような状態が続いている場合は、一度ご相談ください。

  • 薬や湿布を使っても、日常生活の痛みがあまり変わらない
  • 注射をしても、楽になる期間がはっきり短くなってきた
  • 階段の上り下りや、歩ける距離が以前より制限されている
  • 痛みで夜中に目が覚めることがある
  • 外出や旅行を、ひざの痛みを理由に控えるようになった

判断の材料になるのは、治療の回数や期間よりも、生活の中での痛みや動きが変わっているかどうかです。ご相談の結果、「今の治療を続けるのがよい」という結論になることもあります。

早めに受診してくださいひざが急に大きく腫れた、熱をもっている、発熱を伴う、けがのあとに体重をかけられない、といった場合は、変形性膝関節症以外の原因も考えられます。治療の順番を待たずに、早めに受診してください。

よくあるご質問

患者さん

患者さんいきなりラジオ波治療から始めることはできますか?

院長

院長保険でラジオ波治療を受けるには、保存療法をすでに受けていることが条件のひとつです。まずは今までの治療の経過をうかがい、ひざの状態を評価したうえでご相談しましょう。

患者さん

患者さんほかの病院で治療を受けてきました。これまでの治療も考えに入れてもらえますか?

院長

院長はい。お薬手帳や紹介状、画像データをお持ちいただけると、これまでの経過を踏まえてご相談できます。

患者さん

患者さん今の治療で痛みが落ち着いています。次に進んだほうがいいのでしょうか?

院長

院長今の治療で生活に困っていなければ、無理に次へ進む必要はありません。運動療法を続けながら、経過を見ていきましょう。

保険診療以外の選択肢(自費診療)も含めて治療の全体像を知りたい方は、姉妹サイト「ひざの痛み治療の教科書」の膝の痛みの治療法の一覧をご覧ください。

ひざのラジオ波治療について、あわせて読みたい記事

ひざのラジオ波治療の条件、ヒアルロン酸注射との関係、手術を迷っているときの考え方については、次の記事でくわしくご説明しています。

まずは今のひざの状態を知るところから

治療の順番を考えるには、まず今のひざがどのような状態なのかを知ることが出発点です。当院ではMRIを院内に設置しており、軟骨・半月板・骨の状態の評価を院内で行えます。

相談スペースで、女性の患者さんと付き添いの家族が、ひざの模型を使った看護師の説明を穏やかな表情で聞いている様子(イメージ)
※ 写真はイメージです

ひざの治療を、次にどう進めるか迷っている方へ

今受けている治療を続けながら、ご相談いただけます。
お薬手帳と、お持ちであれば紹介状・画像データをご持参ください。

この記事を執筆した人
宇賀治 修平
  • 医学博士
  • 日本整形外科学会整形外科専門医
  • 日本足の外科学会認定医
  • 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
  • 日本骨粗鬆症学会認定医
  • 日本整形外科学会認定リハビリテーション医